指導者が語る合格指南

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理科主任 河原 豊 理科の得点力は“見えないものを見る力”!

理科の出来・不出来が合否を決める?

「3科入試」が増え、理科の重要性が高まったのではないですか?

いきなり、来ましたね(笑)。実はわが理科チームでは、入試合否での理科の重要性について検証するため、学校ごとのデータ分析を進めているところなんですよ。まだはっきりとは断定できませんが、ある傾向はつかめました。それは、いくつかの中学では理科の出来・不出来が合否に確実に影響を与えている、ということです。

本当ですか!?

ええ。たとえば今年度の東大寺入試です。能開の不合格者の平均得点を科目別に比較してみますと、算数で約20点の差——もちろんこれが一番ですが——、次いで理科で約10点の差があるのです。それから、清風南海のA日程入試。ここでも合格・不合格者の理科の得点差は顕著に開いていました。ところが、B日程入試ではそうでもないんですね。実は、A日程では物理・化学分野が「合否分岐ゾーン」に関係する出題だったのです。ここから、難関校入試、特に出題テーマが本格化した場合、理科の得点差が合否に強く結びつくと言えると思います。

合格には、しっかりした知識と“見えないものを見る力”が必要

では、その理科をどう攻略すれば志望校に合格できるか、教えてください。

まず、知識事項については、しっかり理解し、みっちり覚えていくという当たり前といえば当たり前のことを徹底する。これに尽きます。自分で努力したら努力した分だけ、入試でも着実に得点できるようになるでしょう。主に生物分野ですが、ほかの分野でも知識事項はたくさんあります。「必須正答ゾーン」の問題を落としてはいけません。
次に、それが解けるかどうかが合否の分かれ目となる、能開の言う「合否分岐ゾーン」の問題についてです。「理科」は英語で言えば「サイエンス」、つまり「科学」ですよね。だから入試でも直接知識を問うもの以外は、科学の原理・原則をどれだけ理解しているか、あるいは理解できるセンスがあるかどうかを見極めようとしています。難易レベルの差はありますが、これはどの中学でもそうです。
こういう問題に正答するには、知識だけではできません。入試のその場で、言わば“見えないものを見る力”を働かせなければならないのです。何が問われているのか、出題者の意図は何かを、問題の中から読み取ることが要求されます。

問題にひそむ「ルール」を“科学の目”で見つける

具体的に説明してもらえますか。

今年の大阪星光学院で、ミツバチの生態に関するこんな出題がありました。青い紙1枚、白から黒まで少しずつ濃さを変えた紙15枚、全部で16枚の上にそれぞれガラス皿を置き、青い紙の皿にはさとう水を、ほかの皿にはただの水を入れて、40匹のミツバチがどこに止まるかを観察。次に、青い紙の皿にも水を入れて観察。さらに、青い紙を赤い紙に替えて観察。これらの実験結果を図表で示し、ここから実験手順の意図、そしてミツバチが色や明るさに対してどのような識別能力を持っているか考察させる問題です。

すいません。聞いているだけで、こんがらがってくるんですが…。

(笑)ミツバチの生態について、詳しい知識を持っている子どもは「マニア」以外ほとんどいません(笑)。だから入試問題を前にしてのスタートラインはみんな同じなのですよ。実は、答えはすべてこの問題そのものの中に、ちゃんとあります。落ち着いて、実験の手順や結果、そしてその「ルール」を客観的に、つまり“科学の目”で読み解けさえできれば正解できるのです。

遊びやゲームからも「科学」を学べる

理科主任 河原 豊

しかしこれがなかなか難しい!(笑) そういう“見えないものを見る力”があるかないかが入試本番での“得点力”の差となって表れるということはわかりましたが、そんな“力”の磨き方ってあるんですか?

何にでもルールはあります。たとえば、みんなでドッジボールを初めてするとします。どんな人が勝ち残ると思いますか。おそらく運動神経があるとか体力があるとかよりも、ドッジボールの「ルール」をいち早く見抜いてその勝ち方を見つけた人でしょう。オセロゲームだと、角を取れば有利になると早く気づけるかどうかが勝敗のポイントになりますね。そういうことに似ています。
ものごとを自分勝手な憶測で判断するのではなく、事実に基づき客観的論理的に「ルール」を見つけていく。これがすなわち“科学の目”です。こういう思考や着眼をふだんの理科学習の中で習慣づけ、養っていくことが大事ですね。

遠回りしてでも、本当の理科=科学の力をつける

まさに「科学」なんですね。ところで、出題の新傾向ってありますか?

「光」に関する出題が増えていますね。このテーマは、実は「ゆとり教育」で中学へ先送りされたのですが、近年“復権”の傾向です。特に、灘や東大寺などトップ校で目立っています。公立小のカリキュラムでは対応できません。能開では、これら新傾向や「3科入試」に対しても、授業やカリキュラム・教材で十分な対応をとっていますのでご安心ください。

能開の理科の特長は?

「急がばまわれ」でしょうか。正直に言えば、入試理科への「付け焼き刃」なら、入試直前期でも間に合います。ですが、これでは中学入学後に学力の本当の花は咲きません。能開では小4から小6までの3年間、理科を学ぶのですが、小4ではあえて「入試理科」ではない「理科」を学んでもらいます。
ねらいとしては、理科つまり科学の素材である「自然」に興味を持たせること。これで理科への好き嫌いが決まるのです。それから、先ほどの“見えないものを見る力”や“科学の目”を養う土台をきちんと作ることです。その上に、小5・6の2年間で、体系的な理科学習を載せていきます。

理科=科学は広大な学問。好きな分野から学べばいい

理科好きにするアドバイスをいただけますか?

ありふれたことですが、お子様が低学年のうちに動物園や植物園、博物館や科学館などに行かれることは素養になりますね。最近は実物に触れることができる施設が増えています。自然に触れる、という経験が大切だと思います。能開では、主に低学年生を対象に「理科実験授業」というイベントを時々行うのですが、高学年生を含めて大変興味深く参加してもらっています。
それから何度も言っていますが、理科は科学の初歩なんです。高校や大学では様々な専門科学に分化するように大変幅広い学問領域です。小学校の理科は、そういう意味で“雑学の集大成”みたいなものとも言えます。物理・化学・生物・地学の4分野、どれか1つでも興味が持てれば、大丈夫です。そこから少しずつ広げていく。それでいいんです。

子どもはだれでも最初は科学好き

確かに、たとえば物理と生物ではだいぶ違いますよね。カタイ話が多かったので、最後に何かおもしろい話をお願いします。

(笑)そうですね。能開の教材に全ページカラーの「実験資料集」という図版中心のサブテキストがあります。実はこれが大変重要度を増しています。高槻中学の入試で、オリオン座・雲・漁り火の写真を挙げての問題がありました。こういったものは見たことがないと、まったく歯が立たないですね。理科好きな子は「実験資料集」を隅から隅までよく見て覚えています。図鑑や大人が読むような科学の一般書まで読んでいる子も中にはいます。そして即答できないような質問を私にするんですよ。困っています(笑)。
最後に、お母様方に申し上げておきます。と言いますのもこんなお話をよくお聞きするからです。「うちは両親とも文系でして…」とか「子どもが家で冷蔵庫を使って奇妙な“実験”をして困っているんです」とかです。
まず第1に、理科の好き嫌い、出来不出来に「遺伝」はありません(笑)。次に、危険でない限り、“実験”はできるだけ大目に見てあげていただきたいということです。せっかくの“科学の目”をつまないように、ぜひともあたたかく見守ってあげてください。子どもはだれでも最初は科学好きなのです。よろしくお願いします(笑)。

今日は、いろいろ興味深いお話、ありがとうございました。

(2006.06)