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大阪中央エリア責任者 河野 嘉一 学力と人間力は二人三脚。成長できる受験を!

「大阪中央エリア」の北シフトをめざして

まず、プロフィールを伺います。

はい。能開センターでの指導歴はもう20年になりますね。いま堺東校で教えていますが、大阪はもちろん、奈良・滋賀・岡山県の各校で教えていた経験もあります。泉州エリアを経て、大阪中央エリア責任者としては3年目。担当教科は国語と社会です。

エリアの受験状況はどんな感じでしょう?

「大阪中央」エリアと言いましても、難波校を中心として、北に江坂校と都島校、東に八尾校、東南に河内長野校、南に堺東校という配置で、「中央」自体が南方にずれています。現状は正直なところ、大阪市内私学と南部私学への志向が強く、灘など北摂・阪神私学志向はまだ弱いですね。代表校を挙げれば、大阪星光中・四天王寺中、清風南海中です。興味深いことに、これは男子校・女子校と共学校です。近年、共学志向がたいへん強まっていますね。
私としては京阪エリアの強化・拡大に協力しながら、エリアの中心をもっと北にシフトし、北摂・阪神地区をきちんと包み込んだ姿に整えたいと考えています。これまでの能開センターの強みである教育・指導力の確かさと細やかさに加え、テキスト・テスト、カリキュラムなどシステム群の再強化を着々と進めており、「機は熟しつつある」と感じています。これ以上は話せませんが、ようやく準備は整いつつあるとだけ申し上げておきます。

07年度入試に向け、具体的な目標は?

灘中は10名以上、大阪星光中と四天王寺中はそれぞれ40名以上の合格を見込んでいます。「まだまだ」の数字ですが…(笑)。

07年度の大阪星光中・四天王寺中入試

主な中学校の状況はどうですか?

大阪星光中はキリスト教系らしい一本筋が通った信念を曲げないがんこな学校ですね。近ごろの私学が多くとりだした生徒を丸ごと預かりきるスタイルではなく、生徒の主体性、自主性を尊重する指導を貫いています。教育の本道を行く方針、また生徒には自由があると評価できますが、このスタイルで自分を伸ばせない子もいますので、進路決定には注意が必要です。注目は、これまで2日後だった合格発表が翌日になることです。これによって入試3日目の併願受験の幅が拡がります。
2日間入試を単日入試に変える四天王寺中も、伝統校としての重みを感じさせる学校ですね。受験しやすくなるとは言え、女子校のトップブランドですし、日程的にも急な受験者増はないでしょう。それよりも「英数・標準コース」を「英数I・IIコース」に変更する意味が大きいですね。これまでの「回し合格」より、明確なコース分けが実施されることになります。「英数Iコース」の偏差値は若干上がると見込んでいます。それから単日入試によって、これまでより「一発入試」的要素が強まりますね。合・否ともに“まぐれ”が出てくるでしょう。なお、発表日は相変わらず3日後です。このあたりが「伝統校」なのです(笑)。
もう1校、これも単日入試となる清教学園中が注目です。共学校であり、さまざまな制度改革を推進中であり、人気が今後も高まっていくものと思います。

「学力」は「人間力」の上に築かれる

受験は「出口」です。今日はそれまでの「プロセス」についてお聞きしたいと思うのですが。

わかりました。「勉強」は大きな「教育」の一部です。それを念頭に置くことが、ものすごく重要なことだと思うんですね。「学力」は「人間力」の上に築かれるものです。
少子化が進み、一人っ子が増えていますね。愛情を当たり前のように受け取って、子どもたちは感謝する気持ちが希薄になっています。たとえば、お母様がわざわざお弁当を持ってきてくださることへの感謝がありません。「勉強さえしていればいい」なんて、特別扱いは絶対にいけません。家でのお手伝いは役割を決めてさせてください。そしてきちんとやれば、必ず「ありがとう」と声をかけてください。「ありがとう」と言われた経験が「ありがとう」と言える子を育てるのです。
子どもたちには「生きる力」が不足しています。携帯電話ばかり使うので、自宅の電話番号すら知らない子が多いですよ。短縮番号しか知らないのですね。いざというときにどうするのでしょう。私たちはあえて教室の電話を使わせるようにしています。使う前に「お借りします」、使った後に「ありがとうございました」と言えるよう躾をさせていただいています。便利な世の中だからこそ、こういう不便さ、不自由さが大事なことだと考えています。これが勉強における「工夫」、つまり自分で考えることにつながるのです。

「こだわり」がある質問ができるかどうか

それを学習面で言うと…。

学習プロセスを自分の記憶にきちんと残すことです。人間がしっかりした記憶をするためには、うれしいや苦しいといった強い情動が必要です。ただ「わからない」と質問して教えてもらっても、解ける力は決して自分のものになりません。だから、「テキストだけじゃなく、ノートも持ってきなさい」と言うのです。子どもたちはただテキストを「ながめて」考えているだけで、ノートに書いて取り組んだ跡がないんです。強い情動がありません。これでは身につきません。
「問題文を読んだ?」と聞きます。すると、「読んだ」と言いますね。「じゃあ、どんな問題か説明してごらん」と言いますと、言えない。問題を説明できて、初めて「こだわり」ができたということでしょう。「質問すること」が目的ではなく、「問題を自分で解けるようになること」が目的です。安易に「解き方を聞くこと」が「質問」だとの誤解がありますね。いろいろ言いましたが、人への感謝、それと自分で考えることができるようになれば、成績は確実に伸びていきますよ。

伸びる子は「処理能力」が高く、何事も早い

大阪中央エリア責任者 河野 嘉一

伸びる子の条件ってありますか?

私は受験生ばかりでなく、小学1年生から指導をしていますので、思うところはあります。3つの力を小学生の中ごろまでに身につけられるかどうかで、その後の能力が大きく違ってくると思いますね。
1つ目は「処理能力」です。何をするにしてもやるのが早い、スピード感があること。「じっくり考えなさい」「ゆっくりやっていいよ」とよく言います。でもこれでは小4以降、間に合わなくなります。能開センターではそれまでの算数・国語に、小4から理科、小5では社会が加わります。そのままだと、こなし切れなくなるんです。宿題など復習はその日か翌日には済ますべきです。記憶の仕組みから言ってもそれが合理的でしょう。ところが処理スピードがないと、ズルズルと日があき、授業の記憶が薄れ、能率が悪くなるとともに、精神的にもゆとりがなくなります。悪循環の始まりです。
早くできれば、ミスをしても見直す時間があります。どんなミスかを理解できれば、次回から同じ仕方のミスは防げます。これは計算力のことばかりではありませんよ。文字を書くスピードがものすごく重要です。授業中、黒板を自分のノートに写すことを考えてください。書くのが遅ければ、先生の説明を聞いている余裕さえなくなってしまいます。ですから、私たちは短時間の書き取りテストで、多くの漢字を書かせるようにしています。そして、鉛筆の握り方や筆圧についてまで注意、指導しています。

関連づけられた「記憶力」、習慣となった「持続力」

なるほど。2つ目はなんですか?

「記憶力」です。中学入試では参考書・ノートなどの「持ち込み」は不可ですよね。それだけでも記憶力は必要なのです(笑)。記憶には2種類あります。「一問一答」のテストで同得点を取った子らに1か月後、もう一度テストすると、だいたい90点と20点のグループに分かれます。前者は長期記憶で、後者は短期記憶です。短期記憶は「一夜漬け」の記憶で、定着はしていないのです。
長期記憶には「関連づけ」が必要です。言葉で言えば、単語ではなく例文の中で覚えている状態。それから、漢字は書けても読めない子がよくいます。漢字を覚えるとき、音読み・訓読み、意味や用例、部首などを理解することを同時に行うことです。
こんなことを言う子がいます。「『秋』や『積む』はのぎへんだから、収穫に関係した意味。成績の『績』や紹介の『紹』はいとへんだから、時間がかかるんだよね」。すごいですね。部首から意味をイメージできるのです。漢字だけではありません。何らかの「苦労」が記憶力を高めるのです。そしてそういう経験を含んだ知識が豊かな「発想力」を育みます。
3つ目が「持続力」です。これは「習慣」と密接に関係しています。たとえば、机の前にすわる日もあれば、そうでない日もある、ではダメです。三日坊主もダメ。時間は短くてもいいから、低学年の時から決めた勉強は必ず毎日するように習慣づけることが大切ですね。反面、保護者の方も「今日は調子がいいな」とみて、「あれもしたら、これもしたら」と押しつけたらダメです。子どもは先を見越して、ゆっくりやるようになります。早く終わればそれでおしまい、がいいのです。
短くても「集中」が大事です。集中しない子はいません。ゲームに集中できない子はいませんでしょ(笑)。要はオモシロイと感じられるかどうかなのです。
以上の「処理能力」「記憶力」「持続力」という基本能力を小3・4年までに身につけられれば、受験勉強も十分こなしていけるでしょう。

木は水をやらないと枯れるが、やりすぎても枯れる

保護者の方はどういうことに気をつければいいでしょう?

私は常々、塾・本人・家庭がそれぞれの役割を果たす三位一体でいかなければならないと思っています。保護者の方は、塾に任せっ切りも、過保護もいけません。「中道」が大事ですね。木の世話は水をやらないと枯れますが、やりすぎても枯れますよね。それと同じで、適度に管理した放任がちょうどいいですね。勉強が終わったら、持って来させるといいでしょう。そこで「よくがんばったね」とほめてあげてください。これが「水やり」なんです。
「うちの子はプリントの整理ができないんです」と訴えられるお母様がいらっしゃいます。たいてい、「だから、私がしているんですよ」と続けられますね(笑)。過保護です。厳しい言葉をあびせても、結果として甘やかしているご家庭が多いですね。少しでも自分でさせた上で、「上手にできたね」と声をかけてあげてください。一度にたくさんのことを言わないことです。1つずつ、できるまで約束し合いましょう。厳しさは言葉ではありません。約束そのものなのです。
「賢い」お母様には共通の特長がありますね。ご両親の学歴には関係ありません。わが子を「主観的」に見てしまうか、「客観的」に見られるかです。賢いお母様はお子様を客観的にご覧になっています。そしてタイミングよく「水」をやっておいでです。多くもなく、少なくもなく。先ほども言いましたように、小学3・4年生までが重要です。

「いい授業」ではなく「子どもたちが伸びる授業」

20年の指導歴を通じて、能開センターってどういう塾なんでしょう?

これはまた難しい質問ですね(笑)。他塾との違いは、たとえ第一志望校へ合格・入学できても、それで「終わり」だとは考えていないということでしょう。中学・高校で、本人が学力と人間力を伸ばしていけるかどうかを、学習・進学指導の際、いつも考えてしまいますね。
たとえば、偏差値だけで進学校を決めてはいけません。その子に合った学校へ進むべきなのです。難関校に繰り上げ合格になったのはいいんですが、その中学に進んだ方が伸びる子もいれば、つぶれる子もいるのです。
だから、能開センターでは指導者ではない者が進学懇談などに当たることはありません。必ず直接の指導者がお話させていただきます。偏差値や合否情報だけでは、一生を決めるかもしれない「進学」についての総合判断はできないのです。
また、私たちは「いい授業」ではなく、「子どもたちが伸びる授業」ができなければいけないのです。「勉強」内容にとどまらず、子どもたちの顔色やクラスの雰囲気を見ながら、かける言葉、授業展開さえ変えていきます。なぜなら私たちが指導しているのは、成長過程のただ中にいる小学生たちだからです。この年代においては、学力と人間力は二人三脚なのです。とても難しい仕事です。でも、これこそが私たちのやりがいであり、塾としての能開センターの使命だと感じています。

エピソードのなかの「能開センターの受験」

最後に、一番印象に残っているエピソードをお聞かせください。

ずいぶん以前の話になって恐縮なんですが、大阪教育大学の附属天王寺中を志望している子がいました。この子がすごく優秀なのです。もっとレベルの高い学校でも行けると判断し、灘中の文化祭に見学に連れていったのですよ。すると、本人が気に入り、灘中を受けてみると言い出しました。ご両親も賛成していただきました。
当時は奈良私立が先行日程で、まず東大寺中を受験しました。ところが不合格になってしまったのです。灘中はリスクが大きいので、大阪星光中への変更を勧めました。すると、泣きながら「灘中を受けたらダメ? 落ちたら高校入試で再挑戦する」とまで言い、私たちに訴えるのです。私も泣きました。それならとご両親のお許しも得て、灘中を受験しました。結果は不合格。ちょうど、ご祖母がお亡くなりになりました。清風南海中の二次試験があり、これに合格し、進学すべきかどうかという時に、東大寺中から「繰り上げ合格」の通知が届きました。
東大寺中に進学することになったのですが、彼はこう言いました、「おばあちゃんが通してくれた」。そして「6年後に来るよ。6年間がんばるよ!」と言い残して、能開を去っていきました。
6年後、滋賀県で教えていた私を、約束通り彼は訪ねてきてくれました。「先生、東大の文Iに受かったよ」。
受験に人生を感じた、忘れがたい想い出です。私は、「受験」は人によってはこれだけ深いものだと知っています。だからこそ、一人ひとりの受験に、とてつもなく真剣に取り組まなければならないと思うのです。これが能開センターの受験です。

たいへんためになるお話、どうもありがとうございました。

(2006.11)