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入試情報室責任者 露口 和男 ブランドからメソッドへ。情報戦としての入試を制する!

入試・成績情報をユーザー最適にコーディネート

はじめに自己紹介をお願いします。

能開センターに入社したのがちょうど平成元年、ですから今18年目ということになります。私は和歌山県の出身で、和歌山本部の各校で教えていました。それから大阪の近畿圏本部に異動して6年目ですね。指導教科は国語です。
「入試情報室」というのは多岐にわたる業務をしていますが、入試や成績情報のコーディネート役であると自認しています。「情報コーディネート」とは、様々な生情報をユーザーの立場から再整理・加工して、自ら意思決定を行わなければならない保護者や会員諸君、およびそれをサポートする指導者に最適な形で提供することです。そして各ユーザーはその情報に基づき、内的「ダイアローグ」(対話)を行い、意思決定していきます。
古来、「戦い」における情報の占める重要さはいくら語っても語り尽くせません。「敵を知り己れを知らば、百戦して危うからず」と述べた中国の孫子は言うに及ばず、たとえばわが戦国時代では桶狭間の情報戦を制した織田信長。また、中国地方の覇者となった毛利元就。彼は「権謀術数」とも称された情報戦の卓越した勝者でありました。その元就の前には、同じく情報戦で山陰を席巻した「出雲の梟雄(きょうゆう)」尼子経久の存在があります。
受験情報も同様です。持てる実力を存分に発揮するためにも、的確で精確な情報に基づいて、最適・最善の意思決定を下していく必要があります。入試情報室は、そのための、付加価値をつけた情報を提供するセクションなのです。

テスト結果の情報を次に本当に活かすために

「情報コーディネート」の具体例を伺えますか。

まず、成績情報について述べましょう。具体的には、1回1回のテスト結果を受験者本人および保護者の方にどう受け止めていただくかという課題についてです。情報コーディネータとして、要望情報の集約・解析および情報処理システムの改善に努めてきました。その成果を目に見える形にしたものが「成績帳票」に盛り込まれた情報です。

総合実力判定表
「総合実力判定表」

毎年のように改善を重ね、ずいぶん重宝なものに仕上がってきていると自負しています。「総合実力判定表」(成績情報)は「科目別成績」「得点・偏差値・ランク推移」「得点分布表」「科目別復習問題」の4項目から構成しています。これとは別に「志望校合否判定表」があります。
特長の1つは「ランク」づけです。ランクとは、科目および科目総合ごとに「S・TII・TI・AII・AI」の5段階で、能開センター全体の中での絶対クラスを示すもので、自分の本当の位置づけを知ることができます。次に「推移」表。これによって、自分の成績傾向を認知することができます。科目ごとに、上昇・下降傾向、また安定・不安定さが明確に読み取れます。それから、「科目別復習問題」。独自技術の「アノト採点ペン方式」による小問別管理システムを活用した応用情報です。各科目、受験者全体の正答率上位から、自分がまちがったワースト5をピックアップして、即座に克服すべき復習課題を明示します。

本人・保護者へのフィードバックはよくわかりました。成績情報は指導者へもバックされますか?

はい。テストごとに、クラス指導のための検証データ「クラス別偏差値分布表」をフィードバックしています。これで、各校・クラスごとに、他校設置の同クラスとの横並び比較、また科目別にも到達状況が確認できます。校では、クラス指導の反省と発奮を促すべく、指導者向けに貼り出していますね。良いことです。情報は何のために出すのか。それを活用してもらわなければ意味がないのですから。
そしてもう一つ大切なそれは、テスト作成者へのフィードバックです。能開センターの「中学受験公開模試」「実力テスト」を始めとする各種学校別合否判定模擬試験は、各教科の部会にて制作されています。制作にあたっては、全体の平均点のみならず、小問一問ずつに「予想正答率」というパラメターを設定します。この「予実比較」や尖度・歪度・相関係数等一連の統計値をテスト毎にアウトプットし、徹底的なリサーチを実施しています。それにより各科目の部会はテストの品質を保つためのQC活動を行っているのです(サンプル「テスト結果検証シート(算数)」)。

能開の総力を結集して入試情報をお届けする

入試情報のコーディネートについてもお聞かせください。

いま入試情報室から直接発信している情報としては、入試直後に実施の「入試分析会」にて配布する冊子『近畿圏中学入試のすべて』(2006年度版、92頁)と秋の「入試セミナー」で配布の冊子『来年度中学入試の展望』(2007年度版、21頁)にほぼ集約されます。
特に『近畿圏中学入試のすべて』はなかなかの内容で、はっきり言って自信作です(笑)。これは以前、各県別に編集していたものを近畿圏版とし、発展させたものです。内容は単に入試の受験者・合格者数などの数的データにとどまらず、主要中学ごとに能開センター「中学受験公開模試」偏差値との合否相関、また各科目偏差値との合否相関を示す「IR値」など、自分の成績と具体的に比較検証できるデータを情報として盛り込み、さらに各中学校から追加の情報提供も受け、可能なかぎり県・中学ごとの状況を詳しく解説してあります。入試結果検証について、これだけ具体的で、かつ詳細を網羅している情報冊子はまずありませんよ。
これらはもちろん、私一人の力でできるわけがありません。各エリア責任者を中心に全スタッフで行う各学校情報収集、各科目主任を中心に全スタッフが行う「能開メソッド」としての徹底した入試分析作業、つまり能開センターの総力を結集しての「情報戦」の賜物です。『近畿圏中学入試のすべて』はそれを終了した入試に対してのアウトプット、もう1つの『来年度中学入試の展望』は次年度入試に向けたアウトプットなのです。

「調査力」を強化し、「ブランド」を越えて「メソッド」を探る

入試情報室責任者 露口 和男

情報コーディネータとして考えている今後の課題は?

以上申し上げた情報収集・加工・発信は、以前のテクノロジーではまず不可能でした。それが可能になったのは、能開センター全スタッフの情報プラットフォームとなっている社内情報共有ネットワーク網のお陰です。これによる恩恵は言い尽くせませんね。いま能開センター内の情報はすべてデータベース化されています。約10年にわたる膨大な量の情報集積を経て、流行りの言葉を使えば「Web2.0」のレベルに達したのです。これが、近畿圏に広がるスタッフの「暗黙知」を、縦横断的に統合する「集合知」へと転成させつつあります。まず、このネットワークのますますの拡充に努めたいと考えます。
次に、中学校に関する情報収集の質的発展・向上を図りたいですね。情報コーディネータとして磨くべき能力は5つあるとされます。調査力、コミュニケーション力、企画力、対応力、説明力です。この中でも私がこれから最重要と考えるのが「調査力」です。
「中学入試は将来の母校選び」と言われます。その選び方において、すでに単なる「ブランド」による学校選びの時代は過ぎ去り、今や入学してからの教育の中身、つまり「メソッド」が選ばれる時代に突入しています。どんな教育をどう行い、6年間でどこまで伸ばしてくれるのか。私たちはそこまで各中学の内容を調査し、その情報を保護者と受験生に伝える義務があると考えます。これまでが「校門からの調査」なら、これからは「教室に入り込んでの調査」となります。
実際、ある中学では個人別学習進捗管理のために、能開センターが用いている「能開ダイアリー」のようなものを導入し、その利用により家庭学習の状況の把握のみならず、子どもたちや保護者の方とのコミュニケーションをより強固なものにしていくメソッドを確立されています。さらに小学校ですが、新設の立命館は先進的な「メソッド」重視で有名です。
指導者研修の一環として、能開センターが有名中学校にわざわざお願いし講義いただいている「私学に学ぶ!」と題しての一連の中学校勉強会は、実は各中学の教育メソッドの秘密を探るものです。

能開メソッド:「有機的」で、「ダイアローグ」が働く授業

翻って、能開センターのメソッドって何なのでしょう?

当然そうなりますよね(笑)。中学校のメソッドを探究する観点の浮上とともに、能開センターのメソッドをはっきりと明示する必要性を感じています。教科別の指導研修を強化しようとしているのもその決意の表れです。
自分のことを一番認識できていないのは自分だと思うのですね。能開センターが日常あたり前に行っていることが自分たちでは自覚できていない。そんなことがあります。試しに、指導者の誰かに「能開の特長は?」ときいたら、おそらく「生徒一人ひとりに熱心で、めんどう見の良い指導」なんて返ってきますよ。授業で自分たちがふだん実践している、すばらしい「能開メソッド」については、案外意識できていません。

その「能開メソッド」とは?

基本となるのは、「有機的」な授業法、そして「ダイアローグ」(対話)が働く授業だと思います。「有機的」という言葉と対になる「無機的」な授業とは、たとえばシステムだけに則ったマニュアル授業です。それを私たちは「テキストを教える」授業と言っています。それに対して能開は「テキストで教える」授業です。システムやテキストはあくまで指導の手段。目的を見失わない授業と言ってもいいでしょう。
「ダイアローグ」は、指導プロセスとして構造的に組み込まれています。教科特性によって多少の違いはありますが、どの授業でもテーマごとに「解説−演習−確認−評価」のプロセスで進めています。ビジネスマンの方なら、「Plan−Do−Check−Action」サイクルをご存知ですよね。それを指導メソッドとして採り入れているのです。
ここでのポイントは「Do=演習」にあります。「解説」を聞き、子どもたちは「わかる」に至ります。ですが、「わかる」は自分で「できる」ではないのです。そこで実際に自分でやってみるプロセス、これが「演習」です。私たちの指導の大きな特長はこの演習に用いる問題の選定と、そのさせ方にあります。すぐにできる問題、工夫すればできる問題、できないかも知れない問題など、同じテーマでもクラスに応じて味つけを変え、最適なダイアローグがなされるように工夫しているのです。
このプロセスにおいて、子どもたち一人ひとりの中では「自問自答」、つまり内的ダイアローグが激しく火花が飛び散るほどに行われます。これこそがまさに学んでいる瞬間なのです。このとき、「わかる」が「できる」へと跳躍します。学習心理学の言葉で言えば、メタ認知による自己モニタリングが行われているのです。
「確認」とは「演習」のでき具合の確認です。これに基づいて、授業での「できる」を定着させるための家庭学習の内容、すなわち問題のレベル幅と分量を決めます。そして次回授業の冒頭で「確認テスト」を行い、その成果を披露してもらいます。これがプロセスをしめ括る「評価」となります。
「ダイアローグ」と言っているのは、このプロセス全体が指導者と子どもたちとの「対話」であること、そして何より子どもたち自身が内的に行う「対話」であるからです。授業研修では、「原点」であるこの能開メソッドを再検証しながら、具体的なメソッドとして展開し、いっそう深めていくこと。たとえば、教科別の具体的メソッドの確立などが課題となります。

「灘特訓」指導、そして国語科メソッド「読解サブノート」

ところで、露口さんは国語を指導されていて、難波校の「灘特訓」もご担当ですよね。

ええ。「灘特訓」に関しては、今年になって一気に機運が熟してきましたね。夏前には保護者の方々への公開説明会を実施し、夏期講習会中には「灘中模試」を三回連続シリーズで実施後、「夏の集結特訓」へと誘いました。

読解サブノート
「読解サブノート」

それぞれの校がレベルアップし、「灘特訓」に子どもたちをどんどん送り出してくれるようになったことが大きいですね。一方、これまでは各校の優秀生たちも、現実の受験校として兵庫の最難関校までは目に入っていなかったのですよ。
能開センターとして、灘中にはっきりと照準を合わせるべき段階がついに来たのだと思います。これからはオール能開の指導態勢で、しっかりと最難関校入試に臨んでいきたいと思いますね。 それから国語担当としては、国語科の能開メソッドとして「読解サブノート」を挙げておきます。これは、解答のプロセスを「自問自答」するための学習ツールです。自分の答えとともに、なぜその答えを選んだのか、あるいはなぜそう書いたのかを書き出します。そして答え合わせをして、もし間違っていたなら、正解はどうして正しいのかを書き出すツールです。この作業を通じて、解法を「わかる」から「できる」へと深めていこうとするものです。 「読解サブノート」によって、私たちの指導法もずいぶんと論理化されました。文章読解という、ともすれば曖昧な解法を白日の下にさらし、そのプロセスを誰もが学べるよう一歩前進できたと、国語科では考えています。

学校教育は競い合いながら良くなっていく

今後、大きな意味で「中学入試」はどうなっていくとお考えですか?

近畿圏統一入試が2年目を迎えますが、これを「市場」の観点から見れば、この入試方式は京阪神の中学側からの「新たなる挑戦」であって、決して「蟷螂の斧(とうろうのおの)」ではないことが、はっきりとわかります。それが故に、統一入試となっても京阪神の受験者総数はたいした変化はありませんでした。これは、激しくなる受験者獲得競争のほんの一場面に過ぎません。
今後も学校間競争がますます熱を帯びていくでしょう。ある中学では、これまで小6生を中心に行うのが普通だった「体験学習」を、小4・5生対象に実施し始めました。より低い学年からの「青田買い」が進行しつつありますね。コース制の改変や独自メソッド開発など、内部充実競争も先鋭化しています。生存をかけた闘争なのです。
それから私立中学の二極化、すなわち「勝ち組」と「負け組」が明確化するとともに、公立側の動きも波乱要因となります。公立高校の巻き返し、公立中高一貫校の設置などがそうです。また、これまで認知されていなかった新興私立中学にも注目です。メソッドを確立した6年間の指導力で、大学実績をメキメキと上げている学校が出ています。

経験を糧とできる、人間として成長できる受験を

そうした背景のもと、ご家庭ではどう考えていけばいいのでしょう?

まず、「原点」に戻っていただきたいと思います。「入試」を含めて「教育」全般は、子どもたちの「能力開発」の手段にすぎません。公私立を問わず「学校」そして「塾」を活用して、子どもたちの能力開発をしているのだという原点に対する意識を忘れてはいけません。学校や塾は「選択肢」なのです。名前にとらわれず実質をよく見て、また相性を考慮に入れてのご判断が大切です。まさに「ブランドからメソッドへ」ですね。入試情報室としても、それに役立つ情報発信をしたいと考えます。
それから、もう1点。「中学受験」が一般化したことによる、言わば「弊害」についてです。本来、中学受験は誰もが挑むものではありませんでした。ところが、中学受験熱の高まりとともに、「中学受験は親の受験である」というある種の覚悟を内面化できないままに、受験に突入してしまっているケースが近ごろ散見いたします。
たとえば、実力とは無関係に「本命の第一志望1校だけを受け、ダメなら公立中学へ」という保護者の方のお気持ちもわかるのですが、中学入試をする子どもたちはまだ12歳なのです。この言葉の「十字架」を背負いながら試験会場でのびのびと自分の力を発揮するというのは、極めてハードルの高いものではないでしょうか。
中学受験はその子の人生でただ一回だけのものです。この時期の能力開発の機会として十分に活用すると同時に、合否どちらであってもその結果をその後の糧とできなければいけませんし、この経験全体をその後に活かせなければなりません。
私たち能開センターは、受験生本人は言うに及ばず、保護者の方にとっても「悔いのない受験」をしていただけるよう、日々粉骨砕身しております。受験を通して、人間としても成長してほしいと願っています。たとえ厳しい結果であったとしても、受験生には受験をさせてくれたお父様お母様に「どうもありがとうございました」と言える、人間としての明るさ、元気良さをプロセスの中で育んでいければと思っています。それさえあれば、その後の6年間を必ず活かせるからです。
来るべき入試に向けて、この能開センターの「原点」を忘れず、最後の指導に当たりたいと考えます。

本日はありがとうございました。

(2006.12)