指導者が語る合格指南

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社会科主任 齊木 隆司 社会科の重要性と効率のよい学習法

大阪・京都各校の責任者を歴任。
生駒校責任者としては5年目。
今年度、社会科主任を兼任。

社会科は「生き物」、2つの任務を自覚して指導

「新科目主任シリーズ」のトップバッターとなります。まず社会科チームの仕事と任務を教えてください。

2008年度 新社会科主任を拝命しました齊木です。よろしくお願いします。科目チームは、毎年の入試分析、カリキュラムをはじめ指導システムの改善、それに基づくテキスト・テスト等教材の新作や改訂を仕事としています。チームメンバーはベテランぞろいで、安定した仕事ができるチームだと自負しています。
どの科目もそうでしょうが、特に社会科は「生き物」なのですね。世の中の動きとともに、毎年どころか毎月単位でも、学ぶべき内容が変わっていきます。大きなことで言えば、たとえば「ソビエト連邦」は「ロシア連邦」という国に変わってしまいましたよね。現代史はまさに生きています。
地理分野も同じことで、たとえばアメリカ・中国・日本の相互輸出入額は日々変化しています。国内の漁獲農産物量も刻々変化しています。また、用語などの変化もありまして、最近では「リアス式海岸」を「リアス海岸」と呼ぶような動きもあります。
そういうことを踏まえて、昨年は地理分野を中心にテキストの大幅な改定作業を行いました。それから、これは毎年のことですが、「統計資料集」を今年も作り変えています。常に最新情報を提供しているわけです。
だから私たち社会科チームの任務は、こうした最新情報を、教材を通じて、また指導陣に徹底し毎回の授業を通じて、子どもたちにきちんと伝えていくということになります。科目自足的にはこれが任務だと思います。
それから、もう1つあります。受験は社会科だけでするものではありません。4科なり3科なりで挑戦するものです。その授業時間や学習量の配分としては、算国理社で「8:5:3:2」くらいかなと考えます。時間は限りあるもの。その限られた時間の中で、合格点の取れる社会科の学力がムリなくムダなくムラなく、つまり効率よく身につく指導をすること——これが私たちのもう一つの任務と自覚しています。他科目の勉強時間にはみ出さない指導ですね(笑)。

入試分析で「合格するための力」を抽出し指導に還元

能開センターの社会科指導の仕組みは?

2年間で、難関レベルの入試社会に十分対応できる学力をつけます。小5から小6の一学期までに、地理・歴史・公民各分野の単元別学習を終えます。地理については地域別の総合地理、歴史については政治史や文化史などテーマ別通史と、切り口を替えてのローリング学習も含んだカリキュラムです。二学期以降はまとめを行い、入試過去問演習を軸に実戦対応力を仕上げていきます。
社会科に限ったことではありませんが、その際キーになるのが「入試分析」です。能開センターでは独自の分析手法を開発し、定量的データ解析と定性的構造指標を組み合わせて、「合格するための力」を具体的に取り出し、それを反映させたカリキュラム、テキスト、テスト、授業指導に毎年還元しています。
社会科の場合、主要分析軸は「学習機会度」と「解法レベル」の2軸です。学習機会度とは、学習の中でその知識に出会う度合いで、A〜Eの5段階に分類しています。たとえば、「アメリカ」「中国」という国名は誰でも出会いますが、「シエラレオネ」「リヒテンシュタイン」はほとんど出会わないでしょう。もう1つの解法レベルとは、その知識やテーマが設問としてどう解くことが要求されているかに関することで、たとえば穴埋め、漢字指定、正誤選択、統計や図表の読み取りといったことです。
これらの組み合わせで、問題の難易度は決まってきます。逆にここから、正解に至る道も見えてくるわけです。たとえば、合格点をクリアするための知識範囲はどこまでかとか、また、ある知識やテーマについてはどういう設問形式で出題されることが多いとか、といったことですね。

入試問題をゾーン分けし「合否分岐ゾーン」に注目

すごいですね。志望校別の対策なんかも見えてくるのですか?

もちろんです。毎年3月に「中学入試分析会」として広く公開しているのですが、分析結果を全体傾向、また主要中学については学校別にグラフ化して、受験を控えたご家庭のみなさんにご説明しています。
問題の難易度というのは、その問題に対してどれだけの受験生が正解を取れるかという割合です。私たちは入試分析から得た「難易度指数」を、中学校ごと入試全問に当てはめてグラフ化し、それをゾーン分けしています。大きくは、受験生のほぼ全員が正解できる「必須正答ゾーン」、ほとんど正解できない「超難問ゾーン」、その間にある「合否分岐ゾーン」の3つの問題群に分類できます。
合格点を取るためには、ほとんどの受験生が正解できない問題は解けなくてもいいんです。まず、みんなが正解できる問題は必ず正解すること。そして、受験生を振るいにかけ、結果として合格した人は多く正解できた問題、それが「合否分岐ゾーン」にある問題群ですが、これらをどれだけ多く正解できるか。ここが合否の分かれ目なのです。得点で言えばわずか数点の差が大きな違い、つまり合否となって表れるわけです。私たちはこれを「キワ(際)」の戦いと呼んでいます。

合格点が取れる社会科の学力を効率よく身につける

社会科主任 齊木 隆司

合否を事実上振り分ける機能をもった合否分岐ゾーンの問題について、少し具体的に話しましょう。難関中入試において、このゾーンにある設問の代表的な解法形式は「漢字指定」。知識として知ってはいるのだけど、取りこぼしてしまうケースを多く見受けます。対策としては、その用語を初めて学ぶときから漢字で覚えてしまうこと。もう一つの代表例は、正誤などの選択形式で「複合的に解答」しなければならないもの。2つの要素を正しく選択できて、はじめて正解となるような問題ですね。
わかりますか? 両方とも学習機会度としては、つまり知識としてはさほど難しくなくとも、解法レベルが一段上がっていますね。こういった問題群が、合否を決める合否分岐ゾーンにあるのです。難関中入試では、こういう傾向が年々強まっています。大学センター入試の新傾向の設問形式を取り入れて、選択問題を出題する難関中学もあります。
能開センターでは、毎年主要中学の入試全問をデータベース化しています。そこから、テキスト、テスト等教材を編成しています。まず学習機会度の流れでは、必須正答ゾーンに当たるA・Bレベルから順に学んでいき、合否分岐ゾーンにかかるCレベルまでを完全にマスターすることをめざします。難関あるいは超難問ゾーンのD・Eについては、小6後期以降のゼミ、および志望校別の特訓講座を中心に必要に応じて学びます。超難問ゾーンに時間をかけ過ぎるのは効率が悪い学習ですから。
合格点が取れる社会科の学力を効率よく身につける、これが私たちのモットーです。それを最もよく体現している副教材がデータベースからプリント形式で出力・配布する「社会科一問一答問題集」です。すべて入試分析に基づくもので、分野別に整理して1枚に25問ずつ、75枚で構成されていて、全1,800問となります。どういう知識がどういう形式で問われるかを含めて、実戦での実力が効果的に身につく工夫を凝らした教材です。

社会科で身につけた学習法が中学英語の成績を延ばす

近年、社会科がいらない「3科入試」が増えていると聞きますが…。

確かに灘中学のように最初から3科だけの中学校があります。しかし、近年「3科入試」を始めた中学校では「3科受験」もできますが、「4科受験」した上で4科合計点と算国理3科で再配分計算した得点とを比較し、そのうち高得点の方を合否判定に用いるという方式をたいてい併用しています。もちろん、東大寺学園中のように、出願時に3科か4科を選択しなければならないところもありますが。
能開センターでは4科受験を前提に学習を始めます。決してムダな勉強ではないからです。そもそも、入試科目にはなくとも中学入学後には必須の学習科目です。また、ムダにならないどころか、社会科の学習を通じて得るものが多くあるからです。受験そのものについては、本人の最終状況によっては「3科受験」をお勧めする場合もあります。
ある難関中学の先生から直接伺った話です。英語の成績と社会科受験に強い相関関係が認められるのだそうです。4科受験、つまり社会科にも一定の自信をもって入試に臨み合格した新入生は、中学で英語がよく出来るという話なのです。
考えれば、2つの科目の勉強において共通することが確かにあります。たとえば、英単語と社会科用語。一口に「暗記」と言いますが、おわかりのように単なる暗記では多くは頭に入りません。単語や用語の背景や相互の関連性などをうまく組み合わせてこそ、効率よく覚えられるというものでしょう。同じコツが必要なのです。
また、コツコツと積み上げていくような学習スタイルも共通です。私はこれを「ステディ(steady)な」、つまり「着実な」学習スタイルと言っているのですが、こういう学習スタイルが身についているかどうかが中学以降最重要となる英語の成績の伸びにつながっていくのです。

入試にも役立つ学校の教科書と学習の大切さ

最近の入試出題傾向と、その対策があれば、教えてください。

そうですね。学校によって度合いの差はありますが、単なる暗記力を超えた「社会科の実力」を試そうと工夫した問題が増えているように思います。当然のことながら、社会科の本質は暗記ではありません。用語も含めて、文字通り「社会」を総合的に学ぶ勉強なのですから。
だから、ご家庭の皆さまによくご認識しておいてもらった方がいいと思うことは、学校の教科書とそこでの学習の重要性ですね。学校では暗記でない社会科学習が実践されています。たとえば調べ物学習は、自分が興味を持った事柄をどんどんつなげ拡げていく、知識の上手な積み上げ方を学べます。
歴史分野では人物史が多くなりましたが、その人物が活躍した歴史背景の変化を学べます。また地理でも、たとえば鹿児島県の漁師の仕事や新潟県の米作り農家の一年など、生活の中の地理を学べます。こうして知識を、つながりをもって理解していくことが用語の深い理解にもつながるのです。
案外、教科書から入試問題が解けることもあります。たとえば太平洋戦争の始まりと言えば、みんな「真珠湾攻撃」はすぐに思い浮かびますが、同時に東南アジアのマレー半島侵攻も始まっていました。これについて触れているのはまず教科書だけなのですよ(笑)。

時事問題など気にせず、正攻法で取り組むこと

入試に戻れば、前に言った「複合解答」が求められることが多いですね。たとえば、ある工業都市を答えるのですが、地図でその位置も示さなければならないとか。清風南海中学ではこれが頻出します。
洛星中学では、こんな問題が出題されました。ある観光地では駐車場がそこから離れた所にあります。なぜでしょう?という問題です。環境への配慮なんですね。でも、ふだんから環境問題への関心がなければすぐには思い浮かばないですよね。こういう力をつける機会も学校の調べ物学習なのです。
それから時事問題についてですが、気にし過ぎないことです。優先すべきことではありませんし、能開センターできちんと必要なことは押さえます。十分予測はつくのです。今年度でしたら、世界遺産になった「石見銀山」、これは「イワミ」という漢字がミソでしたね。ほかには、世界サミットの「洞爺湖」が出ました。
私たちはプロですから、学校の作問担当の先生方の思考法まで推測しながら「予想」しています。来年でしたら2009年度の下一桁、つまり「9」がヒントになるかも知れないと私たちは思っています。
ご担当の先生方は毎年の作問のネタ探しにたいへんご苦労されています。そこで、同じ下一桁の年の過去の大事件をネタにされることが割りにあるのですよ。今年でしたら「8」で、1868年の明治維新がそうして取り上げられました。
ですが、こんなことにエネルギーを割いても合格はできませんし、中学入学後に役立つ力も身につきません。正攻法で「ステディに」つまり「着実に」学び、その学習スタイルも自分のものにしていくことこそが王道です。

「ステディ=着実」な勉強スタイルが身につく指導を

社会科学習へのアドバイスなどがあればお願いします。

用語というか知識の蓄え方ですが、その言葉だけで覚えようとしないことです。必ず問題まるごと理解しながら、答え方も含めて覚えていくことが、合理的でかつ効率的な学習法です。
テキストを必死で眺め、重要用語を覚えようとしている子がよくいますが、頭に入らないですし、これでは知識の応用も利かないただの暗記になりますので、不合理で効率の悪い学習法なのです。
演習、問題形式で知識を確認していくことこそが大事です。その用語、つまり知識がどう問われているかですね。たとえば、漢字指定で問われる用語ならその理由がちゃんとありますし、選択問題なら他のことと区別できるくらい知識の広がりがあるか問われているわけです。能開センターの教材はすべて実際の入試問題に基づいて作られています。フル活用して力をつけいってください。
社会の王道は暗記ではありません。ですが、一定量の「暗記」というか知識の蓄えは学習を進める上では絶対に必要です。能開センターの会員の皆さんの中には、社会が不得手だ、覚えるという勉強スタイル(ステディ=着実な勉強法)が不得意な子もいます。
そんな相談を受けたときは、私はいつもこう言います。テキストの1回ずつのテーマに沿った「確認テスト」というものがあるのですが、まずこれを1問ごときちんと理解し、覚えていくこと。いろいろやることを拡げてもきっと身につきません。
まずは1回ごとの授業ごとの内容を、この確認テストを通じて1回ごと咀嚼していくことです。本当に咀嚼し自分の知識にできれば、少しずつですが知識がつながってきます。そうして知識が溜まれば溜まるほど、効率のよい学習に変わっていき、覚えるスピードがついてきます。「覚える力」自体を培っていくことが必要なのです。
そういう意味では、3つ目になりますが、これこそが私たち社会科チームの本当の任務なのかもしれません。すなわち、受験勉強を通じて、中学以降に絶対に必要な「ステディ=着実」な勉強スタイルが身につく指導を行うことですね。チーム一丸となってがんばりたいと思います。

わかりました。本日はありがとうございました。

(2008.07)