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国語科主任 辻村 博之 どんな入試にも負けない国語力を育てる

15年の大学受験国語指導を経て、
5年前より中学受験指導へ転身。
今年度、国語科主任に就任。

入試分析から抽出したノウハウを授業へ還元

新主任、「進化」が著しい能開・国語科ですが、今年度はどういう取り組みをする予定ですか?

2008年度 新国語科主任となりました辻村です。よろしくお願いします。
国語科チームは総勢20名の大所帯です。学年別編集ラインを組織し、各種テスト・テキストを作成しています。とは言っても、そういった教材群はあくまでアウトプットです。いかなる国語指導を行うか—、これを徹底的に考え実行していくことこそが私たちの本務です。そしてその根元となるものが「入試分析」だと考えています。
私たちは毎年、難関有名中学の国語入試の1問1問について、コツコツと地道に分析を積み重ねてきました。たとえば、この問題はどうして難しいのか、どういう能力が要求されているのか、ほんものの国語力とは何なのか…等々をそのつど考え抜いてきました。その結果、分析など困難とされる入試国語の「正体」を少しずつクリアにさせつつあります。でも、まだまだ「進化」の途上ですね(笑)。
今年度は、入試分析を通じて抽出できた問題解法を、ノウハウとして授業へ還元していきたいと考えています。そこで実践的に検証し、その結果を分析のさらなる適合化・精緻化に活かし、再び授業へフィードバックするというサイクルを作っていきます。
能開センターの国語科では、大学センター入試まで通用するノウハウを構築中です。どうしてセンター試験なのかという理由については、選択肢問題は中学入試においても最も問題数の多いものなので、そこでの汎用性を高めることが第一です。そして、二次試験の記述問題には、言語の多義性が反映されやすいので、解答も幅を持たざるを得ませんから、解答が一義的に決定される選択肢問題から手がけるということが第二です。もちろん、センター試験で終わりにするつもりはありません。最終的には東大や京大の入試合格に至る国語力育成プロセスを開明していくつもりです。

能開の入試国語の難易度分析フレーム

すごいですね。もう少し詳しく教えてください。

まず、能開センターの入試国語の難易度分析フレームを紹介します。2つの軸から成ります。1つは正解に至るためにはどういう読み取りプロセスが必要かに着目した軸です。「心情把握」「文脈」「全体理解」「因果関係」「二項対立」「言い換え」の6領域で、そのうち「文脈」はさらに3つの小領域に分かれます。
それぞれの領域に該当する個別スキルを、5レベルに難易度評価して分類しています。たとえば、同じ「心情把握」でも「その場面での心情把握」と「心情の変化」とを問う問題では、厳密には別々の読解スキルが要求されていますし、難易度レベルも違います。この軸を「読解処理レベル」と呼んでいて、現在全部で53スキルあります。
もう1つの軸は、設問で指示される解答形式に基づく分類です。「選択肢」「抜き出し」「記述」の3つです。これらもそれぞれ5レベルに難易度評価して分類しています。この軸を「解答処理レベル」と呼んでいて、現在全部で20スキルあります。国語の問題は、「読解処理レベル」と「解答処理レベル」の掛け合わせでできていて、難易度もそれで決まっているというわけです。

センター入試まで通用する選択肢問題のノウハウ

授業に還元するというノウハウを具体的にお願いします。

これまで私たちが集中的に取り組んできてその解明がほぼ終わり、いよいよ授業でノウハウとして展開し始めたのが「選択肢」についてのスキルです。「大・小・転・外・一」と言っているのですが、これらが「誤答」選択肢のすべてです。消去法で言えば、そうではないものが「正解」なのです。
「大」とは本文に対して過剰に内容を含んだもの、「小」はその逆で内容的に不足している選択肢です。「転」とは内容的にズレがあるもの。「外」は本文とは関係のない事実を述べたもので、「一」とは一般真理を述べた選択肢です。最後の一般真理を選び、誤答となるケースは案外多いものです。
これをクラスで唱えます。「ダイ・ショウ・テン・ガイでイチバン(大商店街で一番)」とか言って(笑)。頭の中に選択肢の見分け方を刷り込んでしまうのです。これは私たち国語科チームが何年もかけて解明したノウハウです。だから、あまりここで言いたくないことでもあるんですが…。これは絶対に役に立ちます。大学センター入試まで使えますよ。
選択肢問題で、あと考慮しなければならないのは「要素」の数です。キーワードの数ですね。これが難易度を決めます。語彙力あるいは緻密な読解力が問われます。
たとえば、本文の「月など」を選択肢の文中では言い換えて、「ア.太陽系の惑星を…」「イ.太陽系の天体を…」と書いてある。「イ」が正解ですが、「ア」を思わず選ぶ子はたくさんいるはずです。「惑星」と「天体」の意味をしっかりと理解できていなければ解けません。これが要素で、2つ以上あれば相当難しい問題となります。こういうことも「大・小・転・外・一」の理解のあと、応用編として学んでもらいます。

王道を行く能開センターの国語指導

国語科主任 辻村 博之

教材の改訂予定があると聞きます。また、能開の国語指導の特長を改めて伺いたいのですが。

はい、昨年度後半にパイロット版として作成・運用してきた小6後期テキストを改訂・整備します。これは読解処理のスキルテーマごとに編成したテキストで、記述の解答パターンも勉強できるようになっています。自分の弱点スキルテーマを徹底的に学び克服できるツールと考えます。実は「改訂=進化」は毎年のことで、2009年度には入試過去問題編を加えて、通年テキストとしてもリニューアルします。
能開の国語指導の特長ですが、オーソドックスと言いますか正攻法と言いますか、奇をてらわず後々まで活かせるほんものの国語力を育てようとしている、と言えます。これはどの科目でも同じなのですが、能開センターの指導は「王道を行く」です。 たとえば物語文や小説の読解では、文章から「出来事」の流れを読み取り、それに沿った「心情」を読み取り、それを「発言・行動」として確認、理解します。
出来事 → 心情 → 発言・行動
この読み取り方の指導原則は小4の指導から一貫しています。小5・6では、「出来事」の手前に全体の「事情」の読み取りが加わり、「心情」が正比例的な「発言・行動」とはならずに、ひねった発言・行動として表れる、という違い・発展にすぎません。
事情 → 出来事 → 心情 →(ひねり)→ 発言・行動
以上のような指導の標準化を様々な研修や教科会議を通じて行っています。大事なことは全スタッフが「共通言語」を持つことだと思っています。

論理と感性のバランスが取れた国語力を育てる

最近の国語の入試傾向ってありますか?

文章読解の二大分野として、いま言った「物語文・小説」系と、「説明文・論説文」系があります。あらゆる文章は「論理」と「心情」でできていて、その読解には「論理」と「感性」が必要だと言えます。そのバランスの取れた国語力を育てることが大事なことだと考えます。母国語ですので、ともすれば「論理」が乏しくなり「感性」に流れがちなのです。本好きなのだけど、論説文は嫌いっていうのがこれです。論理的な文章が書けないっていうのも、この流れにあります。
中学入試では、その傾向を踏まえてか、「論理」重視になってきていますね。有名女子中学では、物語文の出題がなく、替わりに論説的な随筆が出題されるという傾向が目立ちます。また、大阪星光学院中学では毎年記述問題が出題されていますが、従来120字だったのが200字に増えました。論述力がより問われるようになったわけです。
文章読解において、カギを握っているのは「活きた語彙力」です。単に言葉として知っているだけでは通用しません。自分で使える程度まで理解していなければなりません。これは何も論理的な文章に限ったことではないのです。文学的な文章でも、比喩を自分の言葉で説明できるかどうかです。感性を論理に転換できるかどうか。論理と感性を行き来させること。これができれば、論説文が不得手な国語嫌いタイプも、物語文が不得手なもう1つの国語嫌いタイプも克服できます。

国語と算数は論理力に通ずる同じ基礎学

国語力って案外、論理的なものなのですね。

能開センターではそう考えています。私が思うにですが、文学系・論説系の素材文を問わず、国語で問われているのは「本質把握力」と「論証力」ではないでしょうか。大学入試で言えば、東大が前者、京大が後者重視ですね。中学入試で言えば、前者の代表が灘中学、後者は洛星中学や今年度の大阪星光学院中学がそれに当たります。
ですから、水と油のように思われがちな国語と数学ないしは算数との関係ですが、実は別物ではありません。論理の学問である数学や算数に優れた人は必ず国語についても優れた力を持っているはずです。同じ論理の学なのですから。
しばしば優れた数学者や科学者は明晰で美しい文章を書く名文家です。ノーベル賞日本人初受賞の湯川秀樹博士に始まり、最近では『日本の品格』で有名になった名エッセイストで数学者の藤原正彦氏まで枚挙に暇がありません。
逆のパターン、つまり国語力に優れた人も数学や算数ができるはずですが、まだ開花せずということもあるようです。あるいは本当の論理力がまだ成長中ということでしょうか。
国語と算数は、理科と社会とは違う勉強です。前二者は基礎学であり、後二者はその上に載せる応用学です。理科と社会は中学・高校、さらに大学へと進む中で細分化されていく「諸科学(サイエンス)」です。国語の「素材」がそのサイエンスに当たります。国語でサイエンスを学ぶことを通じて、基礎学である国語力を身につけるという複合的な関係にあるのが「国語」という勉強なのです。
そういう国語ですので、小手先の入試傾向対策など気にせず、しっかりとほんものの国語力を身につけてほしいと願っています。学校別にすべきことはその時期になれば、きちんと行いますしね。

ご家庭の第一の役割はお子様のモチベーション管理

ご家庭へのアドバイスなど、あればお願いします。

能開センターでは、国語力をいま述べてきましたように論理と感性で捉えています。だからこそ、国語力は誰でも学べるものであり、その構造を論理的に分析することも可能だと考え、執拗なまでの入試分析とスキル抽出を続けているわけです。
「うちの子は、算数はできるが国語はできない」とおっしゃるお母様がいらっしゃいますが、算数ができる子は必ず国語もできるようになります。だから決して本人に「あなたは国語はほんとにダメね」なんて言ってはいけません。それは禁句です。
国語力は、算数のようにすぐにテストの得点などになって現れてくれません。たとえ力が徐々についてきていても自覚しにくいものです。だから、自分を信じて勉強を続けることが大事なのです。やる気を殺ぐような発言だけは控えてください。
力がまだ安定しないとき、テストの得点は上下します。その高い点数の方に注目してあげてください。その点が取れる潜在的な力はあるということなのです。
あと、「お母さんはできたのに、あなたはどうしてできないの?」なんてのもいけません。兄弟や友人と比較するのもダメですね。できるようになる時期、得点となって現れる時期はそれぞれ違うのですから。ご家庭の第一の役割はお子様のモチベーション管理だと、お心得おきをどうかよろしくお願いします。

どんな入試にも負けない国語力とは

いろいろお話しいただきましたが、結局「国語力」とは何なのでしょう?

私は、「人に説明できる力」だと考えています。たとえば「不思議」とはどういうことか説明できますか? 私は長年東大・京大をめざす高校生を相手に指導してきましたが、彼らでも即答できる子はまれですね。自分で使える言葉になっていないのです。
漢字って意味がありますよね。熟語だと一字が違えば、意味も変化していきます。同音異義語も気になります。そういうふうに1つ1つの言葉を理解し、咀嚼し、自分で使えるようにすることが大切です。
ご家庭でお子様に勉強を教える必要はありません。ただ、時々そばでノートを見ながら訊いてあげてください。「お母さんに、これ教えて」というふうに。自分の言葉で説明する練習なのです。
高校生になっても、自分から質問できる子とできない子がいます。これは性格の違いではないのです。できない子は、何を「どう」質問すればよいのかわからないのです。自分で「発信」できるというのはこういうことです。
つまり、「人に説明できる力」=「発信できる力」です。国語の読解・理解力は表現・発信力と裏表なのです。これがその後の人生で活かせる「ほんものの国語力」であり、「生きる力」でもあります。
四天王寺中学では、これは数学が中心の話ですが、学校で一度解いた問題を、家で一人で白紙からもう一度解くことがしばしば宿題となるそうです。これも、自分で「発信」してみる練習なのです。
どんな入試にも負けない国語力とは、自分で説明できる力です。人に伝わるためには論理的に思考しそれを表現できなければならないからです。これはあらゆる勉強や学問に通じることです。だから国語は基礎学なのです。そういう国語力が身につく指導を、私たち能開センター国語科は続けていきたいと思います。

本日はありがとうございました。

(2008.08)