指導者が語る合格指南

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理科主任 早坂 祐一 感動を覚えるような授業を子どもたちに与えたい!

15年の指導を経て今年度理科
主任を再任。
理科のエキスパートとして常に
近畿中学受験の先頭を走る。

知識を組み合わせて考察、類推、概括する力が鍵。

今年のノーベル物理学賞を日本人3人が、さらには化学賞でも日本人1人が受賞したという快挙は、まだ記憶に新しいところです。心から功績を称え祝したいと思います。
PISA※の結果で2000年に世界2位だった日本の中3生の「科学リテラシー」は、2003年にフィンランドと並んで1位に。しかし2006年には5位に転落。「理科離れ」が危惧されていた日本ですが、こうした流れの中で中学入試で問われる理科の出題傾向としてはいかがですか?
(※OECDによる国際的な生徒の学習到達度調査のこと。義務教育修了段階の15歳を対象に、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシー、問題解決を調査)

中学入試に備え学習する知識事項は数千にも及びます。ただし、暗記にのみ終始し知識・記憶力だけで得点を競わせるような、いわゆる一問一答式ではありません。出題する私立中学校の先生方も、そのような知識再生力を理科の問題全部で試すことはしません。知識の再生のみで得点できる限界は、40%前後ではないでしょうか。残り約60%の問題群を正答するためには、持てる知識を利用し、組み合わせていかに考察するか、類推するか、概括していくか、が鍵となります。中学校にもよりますが、そのうちの半分、全体としては70%程度得点する必要があります。難関といわれる中学校の入試問題では顕著にその傾向が出ています。
生物分野については、生活する中で身近にある事象を題材としたり、参考書等では扱われていない実験・観察を通じて考察させることなどが良い例です。物理・化学分野も同様です。問題が既知の原理を活用できる実験形式になっていたり、図・表などのデータから法則を概括させる出題は数多くあります。このような出題の意図を読み取り、我々は「理科を好きになってもらうためにはどうしたらいいか? どのようなきっかけ・感動を与えようか?」を念頭に置きながら授業を行うよう努力しています。
もちろん、知識の習得は必要不可欠です。背景として1の知識しかない生徒と5の知識を持つ生徒が発揮する原理活用力や現象概括力には大きな差が見られるのは自明です。前述の通り、組み合わせを考えると5倍に留まることはないでしょう。ただし、子どもたちは機械ではありませんので、ひたすら知識事項の暗記を課したり、出題パターンをインプットするべく問題演習の作業をこなすだけでは限界があります。そのような暴走はむしろ、理科離れに拍車をかけるといっても過言ではありません。詰め込んで得られた知識は脆いものですが、感動を覚えて得られた経験は生涯忘れません。そのような、何かに覚醒するような瞬間を与えられれば!
人間の脳はよくできています。「ごみ箱」に入れるまでは記憶されていて、入れてしまえば消え去るパソコンの仕組みのようには、良くも悪くもできていませんよね。時には目の前で実験することも大いに必要なのです。このバランスを入試まで保たせることこそ、我々の対策であり、使命と考えております。

良質の入試問題を精選したオリジナルテキストで授業を強化

理科の今年度の重点目標はどういったものになっていますか?

授業時間については、算数が約3倍多くなっています。その影響もあり、宿題を含めた理科の学習時間はそう多くは取れていないのが現状です。したがって、授業でどれだけ力をつけることができるか、まずは実践面での強化に取り組んでいます。
ゼミカリキュラムについては、中学入試において必須となる単元の学習が終了する段階で直ちに重要単元の再学習を行います。算数大全※と同様、過去10数年以上にまでさかのぼり全国の入試問題をチェックし作成したテキストを使用します。効率よく知識事項が復習できる問題、演習→解説を通じて『自然現象・自然科学の理(ことわり)』を体感してもらえるような問題、我々も感心するような切り口で展開されている問題等、厳選された問題集となっています。毎年入試結果を検証し、熟成を重ねていきます。選択講座についても、ラインナップを充実させていきます。
※『算数大全』能開センター 近畿地区 中学受験プロジェクト本部のオリジナル算数テキスト。入試問題分析結果を毎年反映させて更新している。

五感を使った体験の積み重ねが理科の土台を育む

ご家庭ではどういうことを心がければ? アドバイスをお願いします。

唐突ですが、可能なかぎり家事手伝い等を通じてさまざまなことを子どもに問いかけてみて下さい。「なぜだろう?」と興味をもち考える前に「何? 何?」と答えを聞きたがりませんか? 今まであまり考えることをせず生きていればそうなります。
子どもたちの環境の変化・社会性などの変化も大きいでしょう。パソコンなどの検索エンジンを使えば、世界中の公開情報については一瞬で手に入りますし、対人ゲームといっても見ず知らずの人とオンライン上で楽しめたりする時代です。家族でどこかへ出かけるときも徒歩をもっと取り入れてみて下さい。速度と目線が少し変わるだけで、今までと違った視界が広がります。
雑草についた卵を見て「気持ち悪い」で済ますのではなく、子どもと一緒に図鑑などで調べてみたり、その後の様子を何日かかけて観察してみたりするのもすばらしいことです。また、何かさせてみて失敗したら頭ごなしに叱らないで下さい。「なぜそうなったのか?どうすればよかったのか?」を考えさせてもらいたいのです。さまざまなところに、理科好きになれる種はあり、そのような体験一つひとつは必ず理科に必要な力を新生させ、科学的なリテラシーを育みます。

技術立国日本を目指し、子どもたちに理科を通じて夢を与えたい

理科主任 早坂祐一

結局理科(科学的リテラシーor科学的な思考力or態度)って何でしょう?
理科の力は、子どもたちが将来生きていくうえでどういう意味を持つでしょうか?

理科の入試問題を解答するのに必要な力は多岐に渡ります。一般的に言われている科学的思考力は大変奥深いものです。当然、一朝一夕に身につくものではありません。しかしながら、毎日の生活にコミットしている科目でもあります。「理科離れ」が言われて久しい昨今ですが、これは理科の指導者(我々や学校の先生すべて、と考えています)がきちんと教えていないからではないでしょうか。理科が好きな先生がどれだけいるか、と考えるとさびしく感じることさえあります。子どもたちが社会に出て1人でも多く自然科学分野で活躍することができるよう、指導者である我々は研鑽を重ねなければなりません。
話は変わりますが、高校で物理を履修する生徒が3割を切ったとも言われたり、大学の工学部人気が大変落ち込んでいるようです。大学入試センター試験が始まった1989年度と比較すると志願者数で半減しています。(医学部はほぼ倍増)学部出身者としては悲しい現実です。私見ではありますが、日本は技術立国であるべきと考えています。そのためには、多くの子どもたちに理科を通じて夢を与え続けていくことが大事なんでしょうね。今回のノーベル賞受賞の快挙が、刺激になればと思います。
中学入試は長い人生の上で一つの通過点に過ぎません。『理科』を楽しむことができるようになったその時、多様化する社会で堂々と生きていける人間に成長していることを願っています。

本日はありがとうございました。

(2008.10)