指導者が語る合格指南

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理科ゼミテキスト編集責任者兼能開センター上本町校責任者 外村 昌人「身近な現象や四季の生物の観察により、科学的思考力を高めたい。」

算数・理科を指導。特に受験理科を中心に20年の指導歴をもつ。灘中をはじめ多くの中学へ合格者を輩出。受験理科に関する研究家で、全国の中学受験から大学受験に至るまで、理科の出題傾向や対応法・指導法などを研究し蓄積している。
能開センターでは西大寺校・八木校での指導を経て、2009年度より難波校や八尾校で理科を指導、また能開センター最高峰講座である灘特訓理科(土曜)の授業も担当している。
授業以外でも、『新理科ゼミテキスト』編集責任者、能開センター上本町校中学受験専門館責任者として重責を担っている。

3科入試普及により重要度が増した理科。入試はオーソドックスな良問に回帰傾向。

2010年度の理科の入試で特徴的な傾向はありましたか? 中学受験理科の特色と入試の概況分析も含めてお話しください。

2010年度入試の理科は、ここ数年に比べると、オーソドックスな問題傾向に戻ってきています。最難関校・難関校でも、問題文を読んでもどのような現象なのかが理解できないような難問奇問の出題はなく、受験生が初めて目にする現象であったとしても問題文をよく読めば解答が進むような、よく練られた良問が多かったと思います。

また入試制度の変化と関連することですが、算国理の3科型入試の本格化によって、これまでよりも理科の得点が合否に影響する割合が大きくなったということが、2010年度入試の特徴として挙げられます。例えば、算数の難度が上がっている学校では、算数で得点差がつきにくくなり、その結果理科での得点力が、合格力になったと言えます。
このように3科型入試では、算・国のいずれかの難度が上がると、理科の得点力がポイントとなります。3科型入試が主流となりつつある現状では、理科の得点力を上げていくことが、これまで以上に重要になってきたと考えています。
もちろん理科だけではありませんが、3科型入試は4科型入試に比べ、1科目の出来不出来が結果に大きく影響しますから、理科の受験指導もより一層の精度と効率を上げていく必要を強く感じています。

「よく練られた良問」とは、どういう問題なのでしょうか?

受験生にとって馴染みのない自然現象が題材として出題される場合があります。これは、受験生の思考力を中学校が見極めたいからにほかなりません。というのも、頻出内容や典型的な問題に対しては、多くの受験生は条件反射で解答できるくらいまで練習を重ねていますので、そのような出題内容では練習量は試せても、思考力を診断することまではできないからなのです。ですから出題側は、受験生にとって「学習機会の少ない」=「馴染みのない」題材を使って受験生の奥深くに育っている思考力を判定しようとしているのです。ただし、そのように馴染みのない題材を使った問題は、よく「練って」出題されないと無闇に一律に正答率を下げ、得点差の出ない試験結果を招くことになります。このような問題は受験生が本格的に思考する以前に、現象そのものを理解することが困難になっている場合が多く、思考力を試すという目的が果たせない問題、いわゆる「悪問」になってしまいます。

しかし、今春の入試問題は「馴染みの少ない題材」でありながら、問題中で与えられた条件から原理や法則性を発見することができ、発見した原理や法則性を発展的に利用して解答できるような内容が多くみられました。つまり私の言う「良問」とは、自然現象の仕組みを理解するための条件やデータが的確に与えられ、受験生が原理や法則性を自身で発見できる問題を指しています。
昨年は、条件文を読んでも起こっている現象が理解しにくく、結果的に科学的思考力よりも国語的読解力が要求される問題が多かったと思います。今年は、しっかりと基本を理解し、科学的考察力を身につけているかどうか、が問われる問題が多かったと言えます。もちろん例外もありますが…。

今の子どもたちの少ない観察機会を考慮し、観察のポイントとなる点を中心に教材を編集しています。

低学年〜中学年期の理科の指導で、能開センターが注力していることは?

最近のお子さんたちにいちばん欠けているのは実体験です。身の周りの現象や四季の生物の移り変わりについて、しっかりと実物を観察するという経験が非常に少なくなっています。ですから、自然に触れたり身の周りの現象を観察する機会を、普段の生活の中で意識してつくっていく必要があります。
入試問題に頻出する身近な現象や生物について、授業の中で興味をもたせ観察のポイントを説明することで日々の生活の中にある実物を強く意識させます。そうすることで、子どもたちが実際にその現象や生物に遭遇したとき、ポイントを押さえて観察することができるようになるでしょう。ですから、授業で使う教材は単元全体を漠然と捉えるのではなく、必要なことを印象深く捉えられるよう、内容を組み立てているつもりです。

入試問題に扱われている材料は、子どもたちの身の回りに多数存在します。しかし、問題で問われているような知識、あるいは視点で、子どもたちはその現象を見ていません。それをどんなふうに理由付けて、どんなふうに組み立てて受験理科にひきつけていくのか、というところが受験指導のカギです。子どもたちの経験をうまく引き出し、理科的に現象解説し、法則性をもった知識として確立していかなければなりません。何が起こっているかを論理的に説明できるような理科的考察力を身につけてほしいわけです。
簡単な例をあげれば、「湯気は液体か気体か」という疑問に、「目に見えているのだから液体である。気体ならば目に見えないはずだ。」といったような考察をすることです。
また、生物の進化には必ず理由があって、環境へ適応するために都合のいいような体のつくりをしています。そういうことを理解していれば、進化や分類についてはおのずと理解できていくのです。能開センターの教材も、そういう知識の組み立て、理解の仕方を促せるように編集しています。

理科の原点は観察。机上の勉強だけでなく、四季折々の観察を通して“当たり前のことを当たり前に身に付けておく”ことが大切。

能開での理科指導を補完するものとして、低〜中学年期のお子さまをお持ちのご家庭に期待することはありますか?

先にもお話しましたが、都会に住む子どもたちは、理科の礎である、生物などの観察経験が圧倒的に不足しています。生物を見て、何という生物だろう? なんでこんなことをするのだろう? なぜこんな形をしているのだろう? というような疑問が理科的考察力の原点です。観察を通して様々な疑問をもち、疑問に対して自分なりに理由を考える。当然最初は正解ではありません。その後の経験や学習を通して、正確な理由に補正していくことから理科的考察力は発達していきます。基本は観察! 観察力を高めるためには、意識して生物観察をする習慣を身につけてほしいですね。

机上の勉強も大事ですが、散歩などを通して、同じ場所の四季の変化に気を配れるような機会を増やしていただき、一つでも多くの生物名を身につけておいてもらえることが、理科の入り口として大事なポイントです。そういう観察力がついていれば、物理や化学の観察力や考察力はついてきます。
毎回違う場所に行くのではなく、定点観測、つまり同じ場所での違い、変化に気づけることが大切です。そして「この花、なんだろうね?」といった日常会話が家庭でよくなされているようなお子さんは、理科の学力が伸びます。

また、保護者の方にお手伝いいただけることとして大切なことは、食材です。何を食材にしているかを、ぜひお子さまに話してあげて欲しい。「今日は焼き魚よ」ではなく、今日はイワシ、今日はアジというふうに、材料名をしっかり言ってあげてください。同じように「菜っ葉の煮物」ではなく、白菜、みず菜、小松菜と。また、ぜひ献立には旬の食材を使っていただきたいです。食卓で旬を理解させる。これは能開の授業ではできないことなので、そういう点は助けていただきたい。身近なことを通して、当たり前の知識を当たり前に身につけておくことが大切です。

上本町は市内有数の教育熱心なエリア。低学年から受験まで、“疲弊させない指導”に注力しています。

能開センター上本町校の責任者という重責も担っておられます。校責任者としての抱負もお聞かせください。

当然ながら場所がら大阪星光、四天王寺の合格率に保護者の方の関心がいちばん高いでしょう。この上本町校から両校にどれだけ合格者を輩出できるかが最も重要だと思っています。もちろんそれをステップとして東大寺、灘へも合格者を出していきたいと考えています。

また、能開センター上本町校には低学年専門のone-twoスクールも併設しています。この地域から、能開センターをご信頼いただき多数のお子さまに低学年からお越しいただいています。当然、早くから学習を始めることは受験指導において有利なのですが、早くからお越しいただいているお子さまを“優位に” “疲弊させずに”受験まで引っ張っていくことに注力していきます。

早く処理できることが善ではない。時間はかかっても“自ら考える姿勢”のある子、楽しんで未知の問題に取り組める子は、伸びます。

低学年期に暗記に頼った勉強をしていると、必ず壁にぶつかります。教えられたままに暗記を頼りに学習していると、その場でどう考え、突破していくかということができなくなります。その点one-twoスクールは、暗記に頼らない指導をしてくれています。解き方のパターンを覚えさせてあてはめていくというのではなく、しっかりと自分で考えさせることを、図を描いたり形をイメージさせたりと、1つの方法論だけにとらわずに指導していますので、その流れを引き継ぎながら、楽しんで考え問題解決していく力を伸ばしていきたいと思っています。「楽しんで問題を解ける子は、受験で成功する」と、私の経験から断言できます。
「あーでもない」「こーでもない」と楽しんで試行錯誤する子は、その場でいくら時間がかかっても、いずれ難問を突破できる力をつけていきます。「昨日はできなかったけど、今日は解けるかもしれない」と再チャレンジする子。一つの問題に2日でも3日でも取り組み続けるようなねばりの姿勢のある子。一つのアプローチがダメでも、おやつを食べたり気分転換した後で、違う切り口でアプローチすることができる子。このような子は時間がかかっても自分で考えることができますから、いずれ問題解決に力を発揮できる子になっていきます。それが大切です。

将来的に最難関・難関校を目指す場合、低学年〜中学年期にかけての指導のポイントは? また、家庭で気をつけていただきたいことは?

まずしっかりと考える姿勢を身につけさせることです。特に3〜4年生では、あせって目先の結果を求めないことが大切です。宿題が早く終わったとか、やり始めてすぐに解けることを「よし」とする保護者の方がおられますが、その点を評価のポイントにするとお子さまが誤った学習姿勢を身につけてしまいます。 例えば分からない問題を2日もかけて解決したという方が、はるかに有意義な勉強をしています。
ですから家庭学習においては、早く終わらせようと急かさないこと。早く終われることが善ではないのです。どう取り組んだかが、中学受験の最大の山場である5年生をうまく乗り越えるためのいちばんのポイントだと思っています。

能開センター上本町校では適切な学習姿勢を身につけ、プロセスを大切にした学習ができるように配慮して指導しています。各学習時期における評価のポイントや、保護者の方のお子さまへの望ましい接し方については、懇談会やフォーラムなどの機会を通して、保護者の方としっかり共有していきたいと思います。

(2010.02)