指導者が語る合格指南

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“最少の労力で最大の効果を発揮する社会科プログラム”を実現する

社会科主任を務めるとともに、教材編集や印刷業務への明るさを活かし、能開のテキスト・テスト等の教材システム全般を統括管理する編集セクションの責任者も兼務する。指導面では、草津校を皮切りにその後大阪に移って旧難波校で活躍し、現在は上本町校で教鞭をとる。指導教科は、主任を務め「中学受験公開模試」等の作成を担当する社会だけでなく、算数でも長年の指導経験と実績を有する。仕事に厳しく人に優しい人柄で知られるが、とりわけ妥協を許さぬ仕事への厳格な姿勢は周囲に時に静かな緊張感を与えると同時に、揺るがぬ厚い信頼を生んでいる。

“生き物”である社会科の学習システムを毎年最新化し合格に最適化させる

入試での社会科の位置づけが一変していますが、いま能開の社会科として取り組んでいることは?

 はい。2005年度から始まった「近畿圏統一入試」以降、3科目入試への流れが加速してきました。それまでから、灘を代表とする兵庫県や、和歌山県の各中学は3科目入試を行っていましたが、統一入試を機に、東大寺・洛星・大阪星光など代表的な男子難関中学が順次「4科目入試」一本から「3科目・4科目アラカルト方式」へと変わり、算国理の理系中心3科目に絞って勉強してきた受験生にも受験しやすいように制度変更されました。
 その結果、社会科そのものの大切さ、また進学後の社会科学習へのつながりとは別に、社会科担当者としては残念ですが、中学受験社会に対する意識や学習にかける時間のウエイトが全体的に弱まってきたかに見える傾向を感じます。
 ですが、女子難関中学では「4科目入試」が堅持されていますし、入試で4科目選択した場合、最も安定した得点源にできる科目は「社会科」であることも事実です。
 もちろん、合格するために3科・4科のどちらが有利かなどということは一概には言えません。なぜなら、受験生にはそれぞれ得意不得意がありますし、入試も年度によって社会の問題レベルや平均点が変わりますから。だからこそ、まず自分の適性をしっかり見極めた、3科あるいは4科の選択が大切です。
 そこで能開の社会では、この全体の流れも踏まえつつ、“最少の労力で最大の効果を発揮する学習プログラム”を実現しており、余計な負担はかけずに社会の得点力を付け、4科目全体の総合力を高めることを重視するものとなっています。それが、合格からの「入試逆算カリキュラム」を小5・6の2年間でムリなく修了する、能開の社会科学習プログラムです。
 私たち社会科チームは、この学習システムの最新化、つまりアップグレードに毎年ちからを注いでいます。なぜなら、他科目もそうでしょうが、社会の毎年の変化をじかに反映する社会科という科目こそ“生き物”だからです。入試問題は前年の出来事を踏まえて毎年変化します。そのため合格を確かなものにするには、これに即時対応した内容の学習システムが必要なのです。合格への“最適化”と言えます。
 具体的には、社会科テキストの統計データの最新化がその一つで、毎年6月に日本の経済・社会に関する最新データを総合的に収集した統計書『日本国勢図会』が発行されますが、これに基づいて全データを更新しています。このデータの更新により、場合によっては問題の正答も変わってきますね。
 また、社会科知識の整理と確認に欠かせない教材となっていますサブテキスト「一問一答問題集」にも同様の対応をします。今ここには2000題程度収めていますが、適宜、新傾向問題も取り入れていきます。それから、入試直前のタイミングで配布します、文字通り社会の動きを盛り込んだ「時事問題集」を毎年新規作成します。あとは、社会科のテスト、「中学受験公開模試」「実力テスト」も同様に“新鮮さ”を意識して作成を行っています。

“活用できる知識”と“いまの社会への関心度や問題意識”が問われている

3科入試の拡がりで出題傾向に変化はありますか? また、出題ポイントは?

 3科入試の拡がりによる特別な変化は見られませんが、近年における全体的な傾向を申し上げましょう。
 まず、出題範囲が教科書中心になり“標準問題化”しているというか、博覧強記を要求するような“奇問”は出題されなくなっていると思います。もちろん、中学によって難問はありますが。次に、時事や現在の社会など“いま”やその変化に着目する傾向が高まっています。3つ目に、統計データ(表やグラフ)や地図や写真資料などマルチデータ(多資料)活用が進んでいます。
 以上の「標準問題化」「現在重視傾向」「マルチデータ活用化」が指し示すものは明らかで、中学入試の社会では知識のいわゆる“暗記”ではなく、その知識を“活用できる理解”が求められているということです。それが“いまの社会への関心度や問題意識”を問うことにも表れていて、歴史や地理の分野の問題でも現在のこととのつながりの中で問われているのです。
 ですからこそ、難関中学では単なる“一問一答”的な暗記知識を超えた理解度を測ることができる形式が選ばれた上で、たとえば正誤判別問題などがそうですが、その出題がなされていると言えるでしょう。そしてこれが難問となっています。
 各分野での出題ポイントをお話します。
 まず地理の分野では、警察の仕事や消防署の働きといった地域生活に密着した身近なテーマから、日本社会全体にわたる地形や産業の特色、人口動向など、さらには日本との関わりの中で世界にも目を転じていくものまで、広範囲のテーマから出題されています。
 特に最近の傾向としては、現在の社会に関連させて多く出題されていますので、テレビのニュースや新聞を通して今の社会状況に対しても敏感になっておく必要があります。また、出題の形式としては統計表やグラフ、地図も併用され、これらの読み解きも求められます。
 歴史の分野では、政治・外交・文化など一定のテーマにそった通史や近代史、また戦後の世の中を映し出した現代史などが、最近の世の中の動静とともに出題されています。その際、出来事の背景や当時の社会状況、つまり“因果”も併せて問われることが多く、その場合は用語の単なる暗記では対応できません。
 また先ほども申しましたが、建築物や人物写真(人物画)や絵画などの資料を用いた史料問題として出題される傾向が強くなっています。関連知識をトータルに理解することが求められているのです。解答への「漢字指定」もいまや常識です。
 それと、日本史が主な出題範囲となりますが、日本と歴史上関わりの深い国々、特に中国や朝鮮半島との関係史もよく出題されます。これもいま現在の問題とも関連していますね。
 公民の分野では、現代日本社会の根幹である日本国憲法が中心となりますが、これのみならず国際連合に関する知識、ODA・NGOなど世界貢献についての知識など、グローバルな観点からの出題が多くされています。時事問題として出題されることもしばしばで、受験生の世の中への関心度や問題意識が問われる分野です。

知識を縦横に編み合わせるカリキュラムで総合的な知識を育てていく

能開の社会科指導はどういう流れと観点で行われていますか?

 はい。申しましたように、能開では2年間で社会科をマスターしますので小5から学習を開始することになりますが、夏休みまでには地理の学習を一通り終えます。はじめに都道府県の大まかな特色や日本の国土や気候について、さらに農林水産業、工業、貿易、環境問題、と学習を進めていきます。
 その際に重要なのは、覚えるべきことがらには、現在の自分たちにつながる、地理的に大切なわけがあるということです。なぜ大切なのかという理由を授業で伝えることで、断片的な知識ではなく体系的な知識として、記憶に残していけるのです。
 夏休み後、歴史の学習へと入ります。時代の流れとともに、歴史を動かした人物にスポットを当てながら、歴史が一つの物語であるように授業では解説していきます。実は採り上げられる人物は限定されています。繰り広げられる歴史展開の中で、子どもたちの好奇心も駆り立てながら、すべての歴史にもやはり理由、因果があることを学んでいきます。
 小6になると、それまで一通り学習した地理と歴史を、今度は別の視点から学んでいきます。地理では地方ごとにその特色を整理し、歴史では政治史・外交史・社会史・文化史といった観点から整理し直します。つまり、一度習ったのとは違う方向からの切り口で縦横に織られた強い布のように、同時に相互につながりのある知識として立体的に再構成していきます。
 夏休み前には、抽象的かつ高度な概念を理解することが要求される公民の学習が始まります。ここでも大切なことは理由づけです。「なぜ二院制なのか」「なぜ衆議院には優越があるのか」など、すべてには理由があります。そしてそれらをつなぎ合わせれば、覚えること自体は最小限で済むのです。
 夏休み後は、知識を体系的に整理し“肉付け”を行いながら、より入試本番に近い演習に入っていきます。そして、入試直前期には「時事問題集」を用い、磐石の態勢で入試に臨みます。
 能開の社会科では、知識の暗記ではなく、すべてのことがらに理由があるという観点で子どもたちに効率のよい学習を提供し、また中学以降につながる本当の意味での“社会科の力”を育成していくことをめざしているのです。
 ざっと以上のような流れと観点で指導を行っていますが、重要ポイントは何度も繰り返します。まず、授業は知識のつながりを強調して進めます。何度も言いました「わけ」「理由」「因果」です。これらが理解できることによって、初めて知識は暗記ではなくつながりのある総合的なものになり、その活用もできるものになるのです。
 あと、統計表やグラフ、地図、写真や絵画など資料類の解きほぐしにも力を入れています。一見無機的なもののように思われる資料類から見えてくるもの、その物語を語ります。乾物を水でほぐすように、有機的な知識にふくらませていくのです。
 そして、もう一つ。現在との関連づけ、自分たちに関係したものとして、地理・歴史・公民の知識を理解するということです。このプロセスの中では学習への動機づけとともに、社会への関心や問題意識を育んでいくことも意識して行っています。
 社会科の学習は得てして“用語暗記”、つまりは安直な“一問一答”に陥りがちです。私たちは、社会科学習がそういう意味での“一問一答”=単発的な知識に終わらないよう最大限の注意を払っています。
 子どもたちは授業を受け、家庭学習でその演習、定着を進めます。それを毎回「確認テスト」としてチェックし、月単位の「実力テスト」「中学受験公開模試」でその実力を測っていくのです。

世の中の具体的な動きに敏感になり、「なぜ」を問う継続学習を

子どもたちに望まれる社会科での学習姿勢は? また、社会科学習の意義をお聞かせください。

 望まれる学習姿勢は、やや大げさな言い方になりますが、人が生きていること、生活していることに好奇心をいだき関心を持つことですね。「地理」とはどんなところで、どういうふうにして人々は生きているのかを知ることですし、「歴史」とはこれまでどんなことがあって今の生活があるのだろうか、そのために昔の人たちは何をどうしてきたのかを知ることです。そして、今現在の世界や日本の社会の仕組みを知ることが「公民」でしょう。
 言うまでもなく、この「地理」というか今の自然環境やさまざまな産業は、子どもたちが生きる未来の生活条件となります。また、「歴史」は決して過去に終わった昔話ではなく、今を生きる自分たちが現在の似たような問題を解決していく手がかりを与えてくれるものであり、それがそのまま未来を創り出します。そして「公民」で学ぶ社会の仕組みや様子は自分たちが担い引き継いでいかなければならないものです。
 まずは、社会の様子を自分と関係のないものではなく、自分に深く関わりあるものとして興味を持つことが大事です。テレビニュースや新聞に目を向けて、注意をはらいましょう。入試社会での、以前ならそう指摘されたような“机上の知識”から、“知識範囲の限定”と“現在の重視”への転換は、日本の政治や世界の国々との関わり、介護や社会福祉、情報化などという世の中の具体的な動きに子どもたちの目を向けさせ、広がりを持たせていくことが現在の社会科に求められていることなのだということの何よりの証左だと思われます。
 断片的な知識ではなく、総合的な理解になっているかどうかは、正誤を判別しなければならない選択肢問題として多くは出題されています。たとえば歴史分野であれば、歴史的事件の背景や、その時の社会状況などが問われます。これでは一問一答式に答えを出せず、断片的な知識では太刀打ちできないのです。ですから、社会科学習を“一対一対応”の知識としてではなく、常に「なぜ」と問うことを組み込んだ学習として取り組む姿勢が必要となります。
 また、「漢字指定」に対応するためには、日ごろから用語は漢字で書く習慣づけをしておくことでしょう。直前になっての切り替えなどは通用しませんから。
 それから、社会科学習は短時間でいいので毎日することが効果的です。継続して学ぶことで知識が自然とつながりを持ち、効率がどんどん良くなります。
 社会科学習の意義としては、いま述べてきましたことに加えて、情報化社会におけるメディアリテラシー向上、将来の職業選択への視点付与の2点を挙げておきます。メディアリテラシーというのは、ニュースはもちろん、うわさも含めた“情報”を評価できる力です。歴史上初めての情報化社会だからこそ、未来を生きる子どもたちには社会科学習で養えるこういう能力が必要です。
 もう一つの職業選択というのは、社会のざまざまな産業や仕組みを知ることがそこで働く人々とその職業を知ることにもなっているということです。たとえば国際連合です。そこでの仕事を知り、将来国連職員になりたいという子が毎年います。社会科は将来の職業に思いをめぐらす時間ともなっているのです。
 最後に、おそらくお迷いになるでしょう、3科目か4科目かどちらにするかということについて一言申し上げておきます。要は、社会科学習を“前向きに”進めることがポイントです。「とりあえずやっておこう」が一番良くないということです。そのような決め方では“負担感”が積もりやすくなるのです。
 どちらにするかは、「社会科が好きだから4科目」「3科目に絞って得意科目を伸ばしたい」など、プラスイメージで決めましょう。もし適性を見極めてからというのであれば、「なんとしても4科目でいくのだ」という強い決意のもと、社会を受講し始めることです。半端な気持ちでの社会科選択は良くありません。
 社会科選択をした方に申し上げます。進学校は4科目選択を歓迎しています。なぜなら入学以降の社会科学習がスムーズに進むからです。6年後の難関大学入試では社会科は必須です。また、あえて4科目を選択し合格した意義も高く評価してもらえることでしょう。受験まであと少し。手を抜かず最後まで全力で取り組んでいって、君の栄冠をぜひ勝ち取ってください。

ありがとうございました。