TOP >「国際化学オリンピック」2年連続の銀メダル受賞・能開OB祝賀インタビュー

 「国際化学オリンピック(IChO)」は世界中の高校生が一堂に会し、化学の実力を競い合うとともに交流を図る年一度の国際大会です。昨年2016年の大会では日本代表生徒4名のうち2名が灘高校2年生だったのですが、なんとそのどちらもが能開センター2012年卒業のOBでした。草津校OBの海士部佑紀君、和泉府中校OBの平翔太君で、両君は健闘の結果、それぞれ銀メダルを獲得しました(そのときの記念インタビューはこちら)。

 そして、第49回大会となる今年2017年は、タイのナコンパトムで76か国・地域から297名の高校生たちが参加して7月に開催されました。そこに、灘高校3年生となった海士部君は日本代表として2年連続で選ばれて参加し、最終結果、2年連続の銀メダル受賞となりました。

 能開センターではこの快挙を記念し、海士部君を招いての祝賀インタビューを母校である草津校において行いました。会場には、「海士部君に続け!」と難関中をめざす5・6年の能開生たちが多数集まりました。また、今春灘中に合格した後輩3名(うち2名は化学研究部に所属)もそろって駆けつけました(インタビュアーは草津校責任者の小林です)。

化学オリンピックへの2度の参加は2つの銀メダル以上に貴重な経験

銀メダリスト

――皆さん、こんにちは。今日は世界の高校生がその頭脳で競い合う「国際化学オリンピック」に2年連続で出場、そして2年連続で銀メダルを獲得という快挙を成し遂げた海士部佑紀君をお招きしました。先生がいつも「あまべ君はね…」と話しているのがこの海士部君です。彼は能開センター草津校のOB、つまり皆さんの直接の先輩で、2012年の灘中入試では見事トップの成績で合格した俊英です。今日は中学受験のときの話も聞きます。お楽しみに。

では、改めまして海士部君、2年連続の銀メダル獲得、本当におめでとうございます。

ありがとうございます。

――2年連続で国際化学オリンピック日本代表に選ばれての参加だったのですが、今回はどうでしたか?

 前回は、「力を出し切れずに銀メダルにとどまった」というのが自分の感触だったので、「今度こそは」という思いで大会に臨みました。高校生最後の機会ともなり、精一杯努力しました。自分では本来の力が出せて金メダルに届いたかと思ったのですが、残念ながらまたしても銀メダルという結果でした。実際、金メダルまでもうあと少しの得点でしたので、もちろん悔しい部分はありますが、自分ではやることはやれたと満足しています。

――2回連続の銀メダルでも十分にすごいことです。

 いえいえ、僕よりすごい人が目の前にいましたから。たとえば、同じ日本代表のS君は僕と同じ2年連続出場、2年連続金メダル受賞です。日本は広い、そして世界はもっと広く大きいことを2度にわたり身をもって知ることができました。それが僕にとっては2つの銀メダル以上に代えがたい貴重な経験です。「オリンピック」ってスポーツであれ化学であれ、やっぱり素晴らしくておもしろいものです。これに2度も参加できるなんて、僕は本当に幸せ者だと思います(笑)。

「化学グランプリ」から日本代表になるまで1年以上にわたる選抜

――ここにいる今小学生の皆さんの中には、今日の海士部君の話を聞いて、将来、化学オリンピックをめざしたいと思う人もいるでしょう。化学オリンピックに出場するにはどうすればいいのでしょう? その紹介をお願いします。

銀メダリスト

 はい、国際大会であるオリンピックの前に、日本代表を選抜していく国内大会があります。それが「化学グランプリ」です。毎年、春に参加者が募集され、夏に選考が行われます。全国から約4,000名の高校生が応募しての1次選考はマークシートによる知識試験です。そこから上位約80名が選ばれて2次選考となります。これは1泊2日の合宿形式で、実験をしてレポート作成をします。2016年は名古屋大学で行われました。

 これで前半戦が終了で、9月に「化学グランプリ」の優秀者が表彰され、同時に高校2年生までの中から日本代表候補20名が決まります。そこからはオリンピック代表に向けての学習と指導、さらなる絞り込み選抜のプロセスで、今年の3月にようやく最終の代表生徒4名が決まりました。その後は特別訓練として強化合宿が何回も行われ、ついに7月タイでオリンピック出場となったわけです。まる1年以上です。ある意味、オリンピックそのもの以上に代表選抜の方が難関ともいえます(笑)。

――このすさまじい競い合いを2年連続で勝ち抜いたのですね。代表候補になってからの学習はどのようにしたのですか。

代表候補には大学初級レベルの化学教科書が与えられ、これで勉強していきます。大学での集合教育もあるのですが、ほぼ自学自習です。それでも最終の代表になると、訓練合宿がみっちりと実施され、十分な準備状態で化学オリンピックに参加できます。日本など先進国の教育システムはやはり充実しているのです。

――化学オリンピックそのものはどんな内容でしたか。

 5時間かけての実験問題、また5時間かけての理論問題に取り組みます。その成績評価により、参加者の約1割に金メダル、約2割に銀メダル、約3割に銅メダルが授与されます。オリンピックはほぼ1週間の日程で、競技以上にエクスカーションと呼ばれる国際交流活動に多くの時間が割かれています。当然、交流は英語主体となります。

得意と苦手を知った上で、好き嫌いはせず、やるべきことをやる

――では、中学受験のころのお話を伺います。事前アンケートで希望の質問事項を聞いているのですが、やはり多かったのがどんなふうに勉強していたのかということです。

 とにかく、どんどん勉強を進めていたように思います。たとえば、テスト前には、出題範囲がある場合にはそこを見直しておくなど、当たり前のことをしていました。そして公開模試を受けた日は、テスト直しをその日のうちに全科目やっていました。

「苦手」と「嫌い」は違います。自分の得意と苦手を知った上で、好き嫌いはせず、やるべきことを積極的に進めることが大事です。僕は算数が得意で国語が苦手でしたので、算数は手早く済ませ、なるべく国語の学習に多くの時間を充てるようにしていました。
 時間ということでは、スキマ時間をムダにせず活用することも大切ですね。国語の語彙学習はそうやってカバーしましたし、算数の難問にもそこで取り組んだりもしました。
 大学受験に向けては文系理系を選ぶということも必要になってくるのですが、それまではなるべく好き嫌いはしないで、バランス良く、学びの土台を築いていくことが大事です。ましてや小学生の君たちは好き嫌いを言ってはいけません(笑)。

海士部

 受験生に対してアドバイスをすれば、精神集中して取り組めるよう、まず学習環境を整えること。部屋の中や机の上が散らかっているのはダメです。僕自身は和室やリビングでも勉強しましたが、どこでもまずは自分の周りと気持ちの整理整頓です。
 次に、長続きしないような無茶なやり方はしないこと。夜遅くまで無理をして、昼間は睡眠不足でボーっとしているなんて本末転倒です。いいことはありません。入試までやり通せる態勢で勉強すること。そのためには体力づくりや健康管理もとても重要です。僕自身、事前入試の後、灘中入試までの間に熱を出してしまったことがあります。君たちはそんなことがないように。

――思い出しましたが、海士部君はエラーが極端に少なかったですね。そんな彼でもポカミスをすることがありました。そんなとき、自らを戒めて「アホですよ~」と自分自身に言っていましたね。このフレーズと行動はわが草津校にいまでも伝統として受け継がれています(笑)。
 ミスが少ないのは見直しがきちんとできていたからで、それができる時間が作れていたからなのです。その時間は問題を解く時間の圧縮から生み出されていて、図を描くべき問題に式しかないこともありましたから、おそらく頭の中で図は描いているのだと、当時、私は想像していましたが、どうですか?

たぶん、そうですね。でも、必要なときには描いていましたよ。

――このやり方は誰でもができる芸当ではありませんので、お勧めはできません。かえって、エラーが増えたりしますから(笑)。

自由な灘という学校では自律した生活を送ることが要求されている

――灘中受験のきっかけは? 実際入学して、灘中学高校はどうですか?

 はじめは洛南高附属中を志望していました。能開の1つ上の先輩が灘中に進学し、受験を勧められました。それから灘中受験へと気持ちが向かうようになりました。

平

 灘という学校は、押しつけがましく感じるような干渉がなく、とても自由な校風だと思います。でも、自由には何ごとも自己責任という厳しい側面があります。やるべきことはすべて自分でやらなければなりません。自律した生活を送ることが常に要求されているのです。

 個性的な人たちが集まっているところだなとも思いますね。一人ひとりがそれぞれ何か優れた部分を持っていて、僕は化学についてはそれなりに自信がありますが、他のパートでは自分よりできる人が必ずいます。そのおかげもあって、いわゆる天狗になるようなことはありません。

 通学時間は確かに長くかかりますが、朝は座れることが多く、好きな化学の本などをじっくりと読むことに充てています。だから、かえって貴重な時間を持てていると思っていますよ。

――最後に今後の夢を聞かせてください。

 化学を引き続き学んでいきたいと思っています。まだまだどうなるかわかりませんが、理論的な分野より、実学的な方向、モノづくりや人の健康を支える分野などの勉強に向かいたいなと今は考えています。

――今日はありがとうございました。