能開特集

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実験2
それでは再び実験です。

では、以下の意味のない(?)文字列を覚えてください。ただし、覚えたと思える瞬間までの時間をはかっておくことが肝心です。

「イクサヤマイマイオヤイカサカサカヤオテハタカヤキカワタハワイサオヒハコヒアヨココトコスヒシ」
覚えた思う方はひとまず画面をスクロールさせて文字列を隠してください。

念のため、5秒後に覚えた内容を再生して完全学習の状態になっているかどうかを確認してみてください。いかがですか。曖昧であれば再び作業に戻って所要時間を加算してください。必ず、完全学習(100%)の状態にしておくことが条件です。
では、休憩がてら20分間自由に関係のないことをして(日常に戻って)過ごしてください。
*すぐにパソコンの前を離れていただくことで実験の果実をとっていただくことができます。
ではどうぞ。

20分経過後

 さあ、覚えているかどうか確認してみましょう。(紙に書き出していただくことをおすすめします。)
完全に再生できればこの時点における記憶率は100%です。再生できなかった方はもう一度同じこと(暗記作業)を繰り返してみましょう。
覚えるのにかかる時間は、確実に短いはずです。
このとき学習時間(最初の暗記時間)が100秒だったとしましょう。そして再学習時間が36秒であれば64%の記憶率だというわけです。みなさんは何%ぐらいでしたか?

記憶率64%
実は

 エビングハウスの忘却曲線(下図参照)によれば、20分後の記憶率は50%程度で24時間後には20%程度に近づき、この後は一月を経ても20%前後を維持することになります。因みに、この記憶率の確認は無意味な文字列においてのみ検証可能なものになっていることをご認識いただくことが大切です。つまり、コーディングをした場合には意味をなさず、コーディングが進んだ場合には全く関係性を失うとお考えいただく必要があります。

エビングハウスの忘却曲線

いかがでしょう。「覚えたらおしまい」というちょっと過激な皮肉が出る理由がご理解いただけたでしょうか。覚える対象に意味を吹き込む力の度合いによって暗記レベルに影響が出るにもかかわらず、丸暗記に走ればただ忘却が進むだけ。「有意味受容学習」という言葉の重要性を示す一事です。

そもそも一生懸命覚えたことが、実は忘れるための労作業だったなんて、笑って済ませられることではありません。子どもというのは確かに単純暗記が得意です。しかし、冷静に考え直してみると、子どもは興味のないことに記憶のエネルギーを燃焼させるようなことはしていません。結果的に、当初は単純暗記でもそこに記憶の補強が進んで周辺記憶が広がり、相応のコーディングができているからこそ定着しているという事実に気がつきます。

要するに、暗記が苦手と自認するケースは、関心がもてないためにコーディングのしようがない状況をつくっていることに原因があったのです。

たとえば、社会科における暗記の対象項目を例にとってみましょう。
よく‘語呂合わせ’というのをやりますが、これもれっきとしたコーディングになります。ただコーディングである以上、意味と対象との関連づけの度合いが重要です。

「農民に嫌な3%の地租改正」

これなどは中々秀逸な語呂合わせだといえます。1873年という年号と共に「地租改正」がいかなる性質をもっていたか、そしてどのような時代背景にあったかまで想起させる形ができていますので、一度理解すれば細部まで長期記憶化できる一つです。ついでにいえば、「この年はいろいろあった」という理由への認識をもつだけで同年の「徴兵令」のみならず、維新のビッグ・セレモニー「廃藩置県」から「苗字必称令」などというマニアックなものまで記憶できてしまうから不思議です。したがって、覚えることに難がなくとも「いい国つくろう鎌倉幕府」は、あまり意味のないコーディングをしていることが明らかです。

しかし、残念ながらこのように既にコーディングされたものは、自分以外の人が作り使いまわしてきたもので、数量の上でも範囲の上でも限界があります。興味のきっかけになるケースも特筆すべきものがありません。要は、いかに自分にあった自分風のコーディングが項目に応じてできるかが鍵を握るわけです。そこで、万能とはいかないまでも有用といえるヒントをここで提示してみたいと思います。

それでは