鳥居 輝良・「最難関α選抜」算数リーダーが語る“合格指南”

記事の日付:2013/05/28

この記事は 2013年05月28日 に書かれたものです。
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『「合格」は当然。「夢のため全力で尽くせる人」をつくることが私たちの仕事』
「最難関α選抜」算数リーダー:鳥居 輝良

鳥居 輝良・「最難関α選抜」算数リーダーが語る“合格指南”

「合格」は当然。「夢のため全力で尽くせる人」をつくることが私たちの仕事

「最難関α選抜」算数リーダー

「最難関α選抜」算数リーダー

鳥居 輝良

近畿圏大手進学塾にて、灘中コース統括責任者を務め、数多くの灘中合格者を輩出してきた。さらなる夢の実現のため新天地を求め、今年度より能開センターに移籍。最難関中受験者の裾野を広げる「小4・5最難関α選抜特訓」算数リーダーを務める他、「小6灘・東大寺特訓」「小5日曜実戦α(灘)クラス」「小5最難関算数特訓」等の最難関指導を担当する。単なる受験合格術を超えた、算数が持つ本質的な“美しさ”を解き明かし優秀児の頭脳ばかりか心まで揺さぶる芸術的とさえ評される選抜クラス授業には、数多くの“違いのわかる”ファンが内外から集う。

将来の最難関入試に挑む「磨けば光る玉」を真心こめて大切に育てる

現在担当している授業のことから伺えますか?

鳥居 はい。まず、「小4・5最難関α選抜特訓」からお話します。これは今年度から始まった、月1回ほど近畿一円から上本町校に集まってもらい、行っている特別講座です。名称の通り、能開センターで算数上位50位以内の優秀な成績を収めた子にのみ参加資格を認める最難関選抜講座です。男子女子は問いません。

 内容は40分程度のテスト、これはこの学年で対応可能なレベルでの灘中入試問題を模したものです、そしてその解説授業です。系統的なテーマ学習というより、むしろ実戦的な力をつける演習講座ですね。本来これは小6、それも後期の学習スタイルです。ふだんの授業では、子どもたちはどうしても「受け身」になりがちです。ここで行うのは言わば野球の「素振り」ですね。バッティング・フォームを作り整えていくものです。ですが、これだけではダメですよね。生きたボールを自分から打ちにいく「フリー・バッティング」の練習も必要です。これが入試実戦演習に当たります。

 もちろん、これを本格的にやろうというわけではありません。この子たちには将来の最難関入試に備え、月1回程度このような経験も積んでもらおうということです。実は内容そのもの以上に、この場に参加してもらうことに意義があると私は考えています。各校で「井の中の蛙」「お山の大将」とならずに、「より上をめざすぞ!」というチャレンジする情熱の炎を熱く熱く燃やしてほしいのです。そういう切磋琢磨の、刺激の場になればと思っています。

ちょうど先日、第1回目の小5講座があったと聞きましたが、いかがでしたか?

鳥居 ええ、予想以上に多数の子どもたちが集まってくれました。やはり、まだまだ小5生だなというのが正直な印象ですね。当然ですが、経験が足りませんし反応速度が遅いです。しかし吸収しようという意欲が、そんな手応えが確かに感じられましたね。経験を積むとともに、しだいに対応力も向上していくだろう、「磨けば光る玉」ぞろいだなと思いました。

 テスト結果ではそれなりの差がつきました。この日のテストは灘中の一日目を意識した10問で構成しました。いろいろな問題を知ってもらい、いろいろな引き出しを蓄えていってほしいと思っています。

 それから、ごいっしょに保護者の方々も多数お越しになり、子どもたちのテストの時間には「教育フォーラム」、この日は「最難関算数に対応するには」というテーマでのスタッフの話をお聞きいただき、その後の解説授業では教室の後方で授業見学をされました。ずいぶんご熱心に聞き入ってくださる方もいらっしゃいましたよ。

 ともあれ、子どもたちはこの「非日常」を楽しみ、有意義に過ごしてくれそうです。私もこれから楽しみです(笑)。真心こめて大切に育てていきたいですね。

 あと、担当しています授業は、平日毎週の「小6灘エクスプレス」。これは最難関入試対応のブラッシュアップ講座です。それから、土曜の「小6灘・東大寺特訓」「小5最難関算数特訓」、日曜の「小6日曜実戦α(灘)クラス」ですね。これら土日の3講座は、能開ゼミの会員生でなくとも受講可能です。実際、比較的都合のつきやすい土曜は他塾生を含めた「他流試合」状態ですね(笑)。双方に良い刺激なっていると思いますよ。

 でも、この土曜特訓こそ、子どもたちにとっては質量ともヘビーなのです。最難関対応のテーマ学習、つまりインプット学習ですから。これに対して、日曜実戦の方はアウトプットですね。私の担当は灘中二日目対応の記述答案スキルアップの授業です。こちらの方が比較的受講しやすいので、内外の受講生をもっともっと増やしていきたいですね。

まさかの出会いと、能開の見果てぬ夢を自分の思いと重ねるように

能開へ移った経緯、またその前後の印象など、率直なところをお話ください。

鳥居 前職のとき、他へ移ろうとは考えていたのですが、実はその選択肢に「能開センター」はありませんでした。なぜなら自分のような「最難関中入試に特化したタイプ」は求められていないと思っていたからです。人を通じて、能開から話を聞いてみないか?と誘いを受けた時点でもそうでした。

 ところがです。面接の場で聞かされたのは「最難関中入試対応体制」の強化・充実への熱い思いでした。もし私が入社すれば、最難関中入試対応プログラムの再整備のほか、適した人材の発掘と育成まで考えてくれないかとも言われました。私への期待は割り引いても、能開が本気であることだけははっきりと伝わってきたのです。

 ちょうど、入試を迎えるときでした。「考えてみます」と言い残してその日は終わったのですが、次に私が能開へ連絡を取れたのはある日の深夜1時、その日の入試対応が終わって帰宅したときでした。私のために、本部で待機していただいていたのです。説得されました、決断へ向けて。ようやく電話を置いたのは2時半ごろだったでしょうか(笑)。

 私の決断はこうです。――すんなり移れるところはある。だが、それで良いのか。そこへ行けば、ただ同じことをしているだけだ。私は現在の立場でできなかったことにチャレンジしたい。新しいことにはむろん苦労が伴うだろう。だけど、新しくつくり出すことには何より楽しみがある。

 将棋の羽生善治氏の言葉を思い出しました。「運命は勇者に微笑む」。私も勇気をもって新天地・能開センターに飛び込む決意をしました。

 それまでの能開の印象は、大阪星光学院中や清風南海中に強い塾、というくらいでしょうか。地域テリトリーを含めて、あまり競合ライバルという感じはありませんでしたね。だからこそ、面接等で聞いた「北摂・阪神“制覇”(これはあくまで私の表現です)」への野望、いや見果てぬ夢には少々驚かされました。

 実はもう一つ印象があります。それは私の価値観に近い人たちだろう、ということです。ご存知のように入試会場では、各塾入り乱れるような応援合戦となります。そこでおのずから、各塾の気風のようなものが匂い漂ってきます。そのときに私はそう感じていたのです。この人たちはウソをつかない「良い人」たちなのだろうと。「良い人」には両面の意味がありますが…。

 実際入社して、能開センターは子どもたちの方を向いて仕事をしていると思います。ともすれば、世間の目、大人の評価を過大に意識して、講座・カリキュラムを作り、授業を行ってしまうことが少なくありません。そのような場合は得てして、成績上位層にばかり目が行きます。しかし能開は、下位層までまんべんなく目が行き届いています。先生も偏りなく配置できています。さらに各校専属の先生が配置され、子どもたちおよび保護者の方々との人間的なつながりも感じられます。

 あえて申します。反面、「良い人」の悪い面があります。「良い先生」や「良いクラス」づくりが優先され、子どもたちに極限までチャレンジさせることができていないのではないでしょうか。私たちの仕事は「プロセス」と「結果」です。良い「結果」を伴わずに、良い「プロセス」だけで終わるのは自己満足にすぎません。この両方が厳しく追求されているかどうかです。

 私の現状の見立てでは、先生も子どもも、そして保護者の方も「良い人」たちです。でも、これはまだ潜在力がひそんでいるということでもあります。私の能開での一番の仕事はこのエネルギーを解き放つことであり、同時に能開センターの未来はここにかかっていると私は思うのです。

子どもたちの思考能力と人生の可能性を最大限広げる仕事として

よくわかりました。最難関入試指導への思い、またその突破の鍵を教えてください。

鳥居 実は私自身小学生のとき、ある進学塾へ通い中学受験を体験してきました。最初の「塾ブーム」で有名になった小さな塾でした。ここの先生のおかげで、私は「灘」という学校と出会い、そこへ進学することができました。

 灘はまれに見る学校でした。奥深さを持った学校でした。「新中学1年生」を本気で「大人」扱いする学校でした。自由と責任を怖いほど教えてくれた学校でした。大人になってからつくづくそう感じています。

 私はいつしかその進学塾の講師になっていました。そして今の私を育んでくれた、私が愛する灘へ行かせてあげたい、自分の後輩を育てよう、と思うようになっていました。これが私の原点です。もちろん、目標は灘だけではないでしょう。私自身、その後、たとえば甲陽学院を知り、内容の充実した良い学校だと確信しました。

 勉強をするというのは、自分がしたいことをするとき、やるべきことをしなければならないとき、自分の能力をフル回転させる準備をすることだと思います。そして、それを最大限引き出してくれるところが良い学校なのだと思います。人生の選択肢を、可能性を広げる環境を選ぶのが中学入試であり、その頂点が最難関校です。やるからには最高をめざそう、チャレンジしよう、というのが変わらぬ私の思いです。

 灘中入試は、「作品」とも言うべき各学校の思いがつまった入試の中でも、やはり違いますね。入試は「入学資格判定テスト」です。灘という学校は、確かにそこへ入学するに値する者だけをきちんと選別できるテストを打ってきます。問題は常に新しく斬新です。つまり、「これまで」が全く通用しません。そこでは、いわゆる教科能力だけでなく、人間的な練磨、総合能力が問われています。本質的な能力を鋭く見抜いてしまうテストなのです。

 では、これに対処するにはどうすればよいか。一言で言うと、まずは本質的な能力を深めていくしかありません。小手先の技では、入試本番でたちまちメッキがはがれてしまいます。どう解くか、どう答えを出すか、つまり「HOW」ではなく、なぜそうなのか、何が問題なのか、つまり「WHY」や「WHAT」という思考スタイル自体を身につけなければなりません。これなくして、「常に新しい」灘入試には太刀打ちできないのです。

 私の授業では、「ああ~」という深いため息が子どもたちの口から漏れるよう心がけています。思わず声に出てしまうほどの深い理解が必要なのです。「あ、そっか」ではないのです。そして、こんな理解を経た「こだわり」が大切です。これを「メンタリティー」にまで育てていきます。こうして「思考スタイル」ができていくのです。その前提は、まず先生がこのメンタリティーを持っていることです。そしてそれを子どもたちに移植していきます。

 もう一つ、高度なスキルが必要になります。いわゆる「かしこい子」は、我流であっても小5まではトップクラスで行けます。しかしそんな子でも、ただそれだけでは灘入試突破は難しいでしょう。なぜなら、灘は思考力の奥行きを求めているからです。情報整理力、ゴールまでのプロセス管理力、複数の小解答を複合的あるいは統合的に再構成する力、簡潔にしてかつ必要十分な表現力…、いろいろに表現できましょうが、要するに大人の「問題解決能力」が求められているのです。なぜなら、入学後すぐに「大人」として扱われ、そういう学業に入らなければならないからです。こちらはスキルとして磨いておく必要があります。最難関入試指導の授業では、当然このこともやっていきます。

鳥居 輝良

中学受験は子どもたちのチャレンジ、そして私たちもチャレンジします

最後に、子どもたちへの思い、鳥居さんの夢をお聞かせください。

鳥居 中学受験は、人生の中での一つの挑戦、おそらく自覚的に取り組む初めてのプロジェクトです。この体験を通してトータルに学んでいってほしいのです。そして、自分の中にある可能性を最大限引き出すことができる人、自分の夢のため全力を尽くせる人になってほしいと思っています。

 このことを本当にやってみるのが「中学受験」です。自分自身へのチャレンジが中学受験です。だから、まず自分がどこまでできるか、とことん追求してほしい、と思っています。能開生は「良い子」が多いです。自分はここまでと勝手に線を引いていないでしょうか。自分の夢のために、全力を尽くしていますか?と、授業では毎回厳しく迫っています。

 そう問う自分自身が大切ですね。自分は「チャレンジャー」であり続けているか? これが私の自戒です。

 全力を尽くせる人、そういうメンタリティー、エネルギーを持った人こそ、社会の有用人材です。そんな社会に役立つ人になってほしいと願っています。中学受験、これは「あえて」行うものですね。だからこそ、本気でがんばってほしいのです。

 私の年来の社会的な夢は、長らく携わってきた「学習塾」「進学塾」の社会的認知をより高めることです。事実において、私たちの活動は単に受験を手助けすることにとどまっていません。私たちは「結果」と同様に、場合によっては「プロセス」においてこそ子どもたちに何事かをしています。「教育」とはそういうものなのだと思います。

 能開センターは学校外教育機関だという自覚と自戒をもって、これまで活動を行ってきたと思いますが、私自身もそうでした。私は能開センターの一員として、その活動において、私たちの仕事の正当な社会認知をより広げていけたらと考えています。子どもたち同様、これはなりたい自分に自ら変えていく、私たちのチャレンジだと思います。がんばります。

ありがとうございました。