OBインタビュー

記事の日付:2025/10/04

OBインタビュー

国際地学オリンピック、国際地理オリンピックでそれぞれ銀メダルを獲得された灘高等学校の井上遥斗さんに、これまでの道のりや大会での経験、そして今後の展望についてお話を伺いました。

自己紹介

灘高等学校3年の井上遥斗です。
2024年に国際地学オリンピックに出場し銀メダルを獲得、翌年2025年には国際地理オリンピックに挑み、再び銀メダルを獲得することができました。

きっかけは「天気予報」

小さい頃からテレビの天気予報を見るのが好きでした。その延長で気象予報士の資格を取ったのが最初の一歩です。
次は何をしようかと考えていたとき、気象は地学の一分野なので、地学オリンピックを目指すことに決めました。
さらに先生に勧められて、地理オリンピックにも挑戦することになりました。

出場して感じたこと

正直、国際地学オリンピックへの出場が決まったときに過去問を見ながら「対策にあまり意味がないんじゃないか?」と思ったことがあり、モチベーションが上がらない時期もありました。
でも、実際に銀メダルを獲った瞬間は安心したと同時に、「上には上がいる」ことを痛感しました。いい出会いの場だったと思います。

とくに印象的だったのが『英語』です。
非英語圏の参加者でも、多くの人が英語を当たり前のように話していました。中にはあまり得意でない人もいましたが、そのような人も多くが堂々とやりとりしていました。

勉強する上での工夫

僕は「ゴールから逆算」して必要なことを見極めるようにしています。
また、通学時間が長いので、電車に乗っている時間をできる限り活用しました。
このような小さな積み重ねが結果に返って来る部分もあると思います。

灘中学校・高校(灘中・高)という環境

灘中・高では科学オリンピックに出場すること自体が珍しいことではなく、心理的なハードルは低かったと思います。
国際地学オリンピックでは代表4人中3人が灘高の生徒で、気楽に話せたのも心強かったですし、地学の先生が国内本選に向けて大学の過去問を準備してくださったことは強く印象に残っています。
僕が苦手な運動がすごく得意な人や、他分野で活躍する先輩たちがいる環境は、とても有意義で刺激的でした。

大会で学んだこと

国際地学オリンピックのフィールドワークでは、大雨で観察予定の地層が流されるというハプニングがありました。どうなるんだろう?と不安でしたが、近くに同じ地層があったことで試験を続行できました。
こういった経験そのものもですし、大会運営の柔軟性を見られたことは良い経験だったと思います。

今後の展望

僕は興味が広くて、経済学、交通工学、気象学、複雑系、実験計画法など、関心のある分野がたくさんあります。
研究職に進みたい気持ちはありますが、経済的な安定や成果を残せるかどうかを考えると、まだ進路は決めきれていません。
ただ一つ確かなのは、将来的に「専門外の人にも科学をわかりやすく伝えたい」という思いです。専門家しか理解できないような社会にはしたくない。そのために自分にできることを模索していきたいと思っています。

受験生の皆さんへ

一生懸命努力することは非常に重要です。これが大前提ですが、努力すれば必ず報われる…というわけではありません。だから、大事なのは、オリンピックでも、受験でも、何でもそうですが、それが「すべて」にならないことです。

受験期は辛いことや思うようにうまくいかないことがあると思います。どうしてもつらいときは、さっさと寝てしまいましょう!
少し時間がかかっても翌日から取り戻せばいいんです。切り替えができるかどうかが大切だと、僕は思います。

最後に。ここまで来られたのは、支えてくださった方々のおかげです。この場を借りて感謝を伝えたいです。ありがとうございました。

国際科学オリンピックについて

国際科学オリンピックは、各分野の高校生が世界の舞台で知識や探究力を競う大会です。
地学オリンピックと地理オリンピックでは、それぞれ特徴ある形式で試験が行われます。

国際地学オリンピック(日本語で受験可)
・筆記試験(70%):地学全般の基礎知識から思考力までを問う多肢選択式。
・実技試験(30%):観察した地層に関する設問に答えるなど、フィールドワークに基づく多肢選択式。

国際地理オリンピック(すべて英語)
・WRT(筆記:40%):地理的な概念や現象の理解、政策提案、図やグラフの作成などを記述式で解答。
・FWE(フィールドワーク:40%):ある地域を調査し、調査結果をもとに地図作成や将来の地域開発などについて記述。
・MMT(マルチメディア:20%):コンピュータ上に表示される写真やデータなどの資料を読み取り、4択形式で解答。

このように、それぞれの大会で「知識」「思考力」「現場での観察力」など、多面的な力が試されます。