東大寺プロジェクト算数リーダーが語る“合格指南”

記事の日付:2017/07/27

この記事は 2017年07月27日 に書かれたものです。
現在は状況が異なる可能性があります。

 

『ワンランクアップをめざせ!2017夏・算数学習へのアドバイス』
東大寺プロジェクト算数リーダー 奥原 圭貴

東大寺プロジェクト各教科リーダーが語る“合格指南”

ワンランクアップをめざせ!
2017夏・算数学習へのアドバイス

 今年も能開センターの“熱い夏”が始まります。受験学年はもちろんのこと、各学年とも一年の中で一番多く時間がとれるこの夏が自分を1ランクアップさせ、次のステージをめざす飛躍の季節となります。
このチャンスを最大限に活かすため、東大寺プロジェクト各教科リーダーがこの夏の過ごし方を語ります。アドバイスを上手に活かして、充実の夏にしてください。

東大寺プロジェクト
算数リーダー

奥原 圭貴

3年生は楽しみながら学び、算数が好きになることが大事

 算数学習において、3年生は知的好奇心と学習を進めるために基礎となる力を両立させながら、楽しく養い育てていく学年段階だと考えます。人には本来学びたいという本能、知的好奇心がそなわっています。それを満たすために問題を解く、授業を聞く、それによって新しい世界を感じとる、これが一番健全な学習の姿ともいえます。

 3年生という段階では、テスト結果、学習の行儀や作法といった目に見える部分ばかりを追い求めすぎてはいけません。学習を進める根本動機となる、算数が好きになること、好奇心を育むことが将来に向けて何よりも大事なことです。
 ただし、「解いたらおしまい」では、本当の学習の楽しさは味わえません。知った知識や技術を自分の中に取り入れることができないと次のステップに活かすことはできません。そのために必要なのは、計算や読み書きなどの作業力、何度も考え直して問題に取り組む集中力など、学習を進めるために基礎となる力です。
 知的好奇心とこの基礎となる力をバランス良く育むことが大切です。今は1問1問に時間をかけられる余裕もあります。算数を解く楽しさをたっぷりと味わうとともに、良い学習習慣を少しずつ育んでいってください。

 また、夏期講習には「円と球」「三角形と角度」「立体図形」といった図形のテーマがありますが、図形もしっかり楽しんでください。テキストの図形だけでなく、家にあるいろいろなモノも、正面から見たり、上からながめたり、さらに展開図にしてみたり…。立体を平面に、平面から立体へと、そんなふうに好奇心を持ってモノを見るクセをつけましょう。図形や空間に対する認識の豊かさにつながります。

4年生は受験算数の基礎。解法の意味と正しい習慣づけを

 4年生では受験算数の基礎を学びます。代表的なテーマは、和と差の文章題、規則性、平面図形です。5年生内容への土台となるものや、そのまま入試問題でも使えるような知識を学習していきます。だからこそ、単に答えを求めるのではなく、なぜそうなるのかという意味を考えながら、また正しい習慣づけをしつつ、じっくりと学び取ることが重要です。

 文章題では、つるかめ算や平均算といった中学入試ならではの特殊算を学びます。これらはいずれも2つの不明の数を求めるもので、数学では連立方程式で解を求める問題です。算数ではここで面積図などの手法を用いて、判明していることと不明なことを図示します。与えられた条件関係の視覚化、つまり思考過程の「見える化」です。図に表してから考えるのです。

 速く解きたい子は、解き方が一度わかるとこのプロセスを飛ばして答えだけ書きがちになります。しかし、自分の思考の見える化、客観化をそのつど行う習慣づけが大切です。図を描くというのは単に答えを出す手段ではなく、自分の算数力を磨くという目的に対しての有効な道具なのです。

 次に、規則性や場合の数についてです。これらのテーマは、「モノの値段や個数」と同じく、「何番目、何通り」といった分離量を扱います。しかし、規則をすばやく見つけるには条件の整理や可視化が必要で、数列ならば数字の上に番号をふる、場合の数なら樹形図を書き出すといった「見えていないものを可視化する」という作業が大切です。

 一方で、規則や決まりが見つけにくいときには、自分の力で数をどんどん書き出して答えに辿り着くという、転んでもただでは起きないしたたかさも必要です。入試では今まで見たことがないような規則や条件が出題されることもあります。つまりこのテーマでは、定石どおり可視化していく手法の習得と、ひたすら調べ上げるたくましさやねばり強さの両方が大事なのです。

 平面図形では、角度の問題や直線図形の面積公式など、今後の図形テーマの土台となる内容を学習します。まだそれほど複雑な図形は出てきませんが、学習の仕方によっては力のつき方が大きく分かれる重要なテーマです。
 図形の基本はフリーハンドで正しい図が描けることです。定規を使ってもいいのですが、なしでもちゃんと描けるかどうかです。よく「ていねいに、きれいに描きなさい」と注意されますが、それは的を射ていません。角度や長さなど条件が「正しく」描かれているかどうかが重要なのです。

 特に、入試では「作図の学校」といわれる東大寺学園をめざすなら、図形への深い理解と親しみを持ってもらいたいと思います。深い理解ということでは、面積を求める公式を覚えるのではなく、そこに込められている意味合いを納得がいくまでじっくりと考えてみるといいでしょう。多面的なものの見方が育ちます。

5年生は重要な「比」を学ぶ算数の山場。学習姿勢の立て直しも

 算数にとって5年生は最も留意が必要な学年です。というのも、4年生までの算数は、前述したような「モノの値段や個数」など、整数値で計算できて具体的にイメージしやすい問題がメインだったのに対し、5年生の学習は「割合・比」という連続量を中心とした抽象的なものを使って解くテーマが多くなるからです。

 4年生の頃に、授業で習った考え方や解き方よりも自分の感覚優先で解いていた子どもたちは階段を踏み外す場合があります。それまでなら大丈夫だった自分なりのやり方、つまり我流が通用しなくなるのです。「中学受験公開模試」と「到達度判定テスト」で大きく成績が違う子(「公開模試」の方がよくできる)にこのタイプが多いと思います。

 解決方法は? ずばり、基本に立ち返ることです。まず、授業をしっかりと受けること。「それは知っている」とか「あとで、自分でやる」とか思わないで、いま目の前の先生の話をよく理解しようとすること、そしてそれをノートにきちんと書き残すことです。
 次に、家庭学習でも基本行動を再確認し、実行します。まず、宿題をためて次の授業直前になってから一度にやるのではなく、授業の翌日には行います。最初にテキストとノートを見直し、正しい解法フォームをなぞります。それから練習(宿題)という順番です。やりっぱなしにせず、必ず丸つけをし、間違いはやり直します。これが「学習の基本」のはずです。

 さて、5年生の夏はまさに算数の山場の覚悟でがんばってもらいたいです。夏期講習の中でも最重要となるのは、「比による解法」を完成させていくことです。比による解法は、これまでずいぶんと手間と時間がかかった文章題や図形での計算を大幅に軽減してくれ、それはあっと驚くほどでしょう。
 夏前半の「文章題と比」のテーマ群では今回が3回目の学習となって、いよいよ仕上げの段階を迎えます。これで、平易な入試問題なら十分に解けるレベルに到達します。後半は「図形と比」について理解を深めていきます。これも入試頻出の最重要テーマ群です。

 このように夏に「比による解法」を一通り身につけた後、2学期最大テーマとなるのは図形です。特に「平面図形の移動」「立体の切断」が関門となるでしょう。ここで効いてくるのがこれまで培ってきた図形への親しみ度合いです。立体を平面に、平面から立体へと、感覚と想像力をどれだけ働かせてきたかが問われます。

 毎日学習できる夏は学習内容だけではなく、学習スタイルの再点検にも最適です。良い学習習慣、土台づくりは大きな力となります。この機会に自分の学習の進め方やフォームを改めてチェックし、基本に戻って立て直しましょう。そして、秋からは受験生たる6年生に向かって飛躍を遂げてください。

6年生はこれまでの学習の集大成。悔いを残さない夏に

 6年生の夏はこれまでの学習の集大成となり、この夏で志望校合格に必要なインプット学習はいったん完了します。そして入試まであと半年となった秋からはアウトプット、すなわち実戦力練磨のシーズンに入っていきます。
 志望校合格に対して、今の自分で完璧だと思う人は少ないと思います。やり直したいことがあるのなら、やり直せる最後の機会です。悔いを残さない夏にしてもらいたいと思います。5年生のところでも述べましたが、つまずいたときはためらうことなく基本に立ち戻り自分を見直すことです。今からでも間に合います。

 夏期講習には、自分はどのテーマに注力しなければならないのかをきちんとチェックした上で、授業をはじめすべての学習に臨みましょう。限られた時間しかありません。浪費しないことが大切です。また、夏の集結特訓には、自分はどんな受験生になりたいのかを考え、そういう受講生としてふるまうことにチャレンジしてみましょう。きっと得るものがあります。

 難関中をめざすクラスでは、この夏に、大阪星光学院の必須正答および合否分岐となる問題の大半、西大和学園の前半の問題に対応する型の問題のインプットを完了します。これらは『算数大全』が第一義的にカバーする領域で、ほぼ類型的に思考、解答が可能な問題群です。以下、これらを難関中合格のための土台となる「根本問題」と呼びたいと思います。

 夏明けからは、この根本問題の理解の上に立って、西大和学園中入試の後半問題と東大寺学園中入試問題の領域へと踏み込んでいきます。西大和学園では、根本問題の型にさらに諸条件が付加されて長文問題となり、知識の活用力を測るより高度な出題となるのがパターンです。
 また、東大寺学園では、根本問題の型がわかるようなスタイルで出題されることはほぼなく、新味の条件が加えられたり逆に条件が隠されていたりするなど、いっそう複雑な表現をとり、これまで見たことがないような型の問題として出題されます。受験生は問題の構造を読み解き、捨象できる条件をそぎ落とし、自分の知っている根本問題に引き寄せてようやく解答を導き出せます。難関中の算数はこのようにできているのです。

 さて、8月最終週からは後期日曜実戦が志望校別クラスとして始まりますが、各クラスとも「得点力」アップがカギとなります。学力はそのまま「得点」とはなりません。自分が解ける問題を選択し、実際に時間内に正確に解けたものだけが得点にカウントされます。これを実現する力が得点力です。
 日曜実戦「東大寺クラス」の算数は2講座編成で、1つは東大寺学園を含めた難関中対策の実戦テーマ学習、もう1つは東大寺学園中入試対策演習です。どちらも作図、そして記述練習に重点を置き、得点力向上のために解答用紙の使い方から指導していきます。

 大事な秋は6年生にとっては小学生として最後の秋でもあります。志望校別模試など模擬試験もたくさんあります。学校行事も目白押しです。体調や学習リズムを乱しがちです。だからこそ、夏にやるべきことは必ず夏に仕上げてしまいましょう。後回しにしてはいけません。受験生の夏を良いものにしましょう。思いっきりがんばって、あなたの願いを自分で叶えてください。能開センターの先生たちが君たちを全力で応援します。